真也は異世界からやってきたことで、この世界の住人とは違う点を持っているはずだというのだ。それが何なのか、本人にもわかっていないが、とにかく調べなければならないという結論に至り、真也が連れて来られるに至った。
そのためには、言葉の問題をクリアする必要があったのだ。
そこで通訳と翻訳のプロを頼ることにした。その1人が、先ほど話した、この車に乗るメンバー達である。
その説明を聞き、真也が少し落ち込んだ様子を見せると、後ろのドアが開く音がした。
冴羽遼の運転する車は、とある建物の前に停車した。
車を降りて正面の建物を見る。3階建ての白いビルだった。入り口の横には看板が立っている。
それを見て真也は首を傾げた。そこにはこう書かれていたからだ。
ハローワーク……と。
冴月から渡された身分証を受付に見せると、受付の職員は英語で何かを言った。おそらくは Hello という単語だったのだろうと推測できるが、真也はその意味がわからなかった。
職員は真也を先導するように歩き、ある部屋の前で止まる。
そして部屋のドアを開けて手招きした。真也が入ると職員はドアを閉め、笑顔を見せた。室内は、オフィスの応接室のようになっていた。革張りのソファが二つ向かい合って置かれており、その間に置かれたガラステーブルの上には、パソコンが一台。壁にはホワイトボードが立てかけられている。その横には大きな本棚が置かれ、本がびっしりと並べられている。また、天井の四隅に観葉植物が飾られていて、空気清浄機が置かれていた。窓は二重になっており、外は見えなかった。
どうぞお座りください。職員はそう言うと、自分は真也の対面に腰を下ろした。
その動作を見ながら、真也は Hello の意味を理解した。あれは、日本語でいえばようこそ、という歓迎の言葉だったのだ。
挨拶に込められていたのであろう好意に感謝しつつ、真也は席についた。すると隣に冴月が、さらにもう一つ向こう側に、背の高い男が腰掛けた。
「こんにちは、君がミスターシンヤね」
男は笑顔で話しかけてきた。年齢は30前後くらいに見える。短く刈り上げた髪に、薄い色のサングラスをかけていた。服装は紺色のシャツと黒のズボンにネクタイ姿だった。
彼が自己紹介を始める前に、真也は頭を下げた。そして自分の名前を言った後、彼の名を問うた。
彼は苦笑すると両手を広げ、英語で何か言った。
すると冴月が This is Ms.Evacuee Sakamoto of the Authority, please entertain me と助け舟を出してくれた。
真也はそれに会釈で返すと ThisisMrs Evacuee Mr Saeda と言うと、彼は右手の人差し指を顔の前に置いて、それを左右に振った。
それから Oh my god と言い、手を叩く。どうやら真也の発音が間違っているらしい。
そして再び口を開いた。
This was a pleasure to met you Shinya Kishibayashi, and I'd like to help your life in
「ここに来たということは……あなたは何らかの事情があって母国を離れ、こちらの国で暮らす決意をしたということでしょう。であれば私の手助けが必要なはずです。どうかよろしくお願いします」
今度は完璧に聞き取れた。真也は微笑む。すると彼も同じように微笑んだ。そして続けて、
「私はあなたの力になりますよ」
と言った。その顔は、先ほどの親しげな表情とは一変し、どこか真剣味を帯びたものになっていた。
そのためには、言葉の問題をクリアする必要があったのだ。
そこで通訳と翻訳のプロを頼ることにした。その1人が、先ほど話した、この車に乗るメンバー達である。
その説明を聞き、真也が少し落ち込んだ様子を見せると、後ろのドアが開く音がした。
冴羽遼の運転する車は、とある建物の前に停車した。
車を降りて正面の建物を見る。3階建ての白いビルだった。入り口の横には看板が立っている。
それを見て真也は首を傾げた。そこにはこう書かれていたからだ。
ハローワーク……と。
冴月から渡された身分証を受付に見せると、受付の職員は英語で何かを言った。おそらくは Hello という単語だったのだろうと推測できるが、真也はその意味がわからなかった。
職員は真也を先導するように歩き、ある部屋の前で止まる。
そして部屋のドアを開けて手招きした。真也が入ると職員はドアを閉め、笑顔を見せた。室内は、オフィスの応接室のようになっていた。革張りのソファが二つ向かい合って置かれており、その間に置かれたガラステーブルの上には、パソコンが一台。壁にはホワイトボードが立てかけられている。その横には大きな本棚が置かれ、本がびっしりと並べられている。また、天井の四隅に観葉植物が飾られていて、空気清浄機が置かれていた。窓は二重になっており、外は見えなかった。
どうぞお座りください。職員はそう言うと、自分は真也の対面に腰を下ろした。
その動作を見ながら、真也は Hello の意味を理解した。あれは、日本語でいえばようこそ、という歓迎の言葉だったのだ。
挨拶に込められていたのであろう好意に感謝しつつ、真也は席についた。すると隣に冴月が、さらにもう一つ向こう側に、背の高い男が腰掛けた。
「こんにちは、君がミスターシンヤね」
男は笑顔で話しかけてきた。年齢は30前後くらいに見える。短く刈り上げた髪に、薄い色のサングラスをかけていた。服装は紺色のシャツと黒のズボンにネクタイ姿だった。
彼が自己紹介を始める前に、真也は頭を下げた。そして自分の名前を言った後、彼の名を問うた。
彼は苦笑すると両手を広げ、英語で何か言った。
すると冴月が This is Ms.Evacuee Sakamoto of the Authority, please entertain me と助け舟を出してくれた。
真也はそれに会釈で返すと ThisisMrs Evacuee Mr Saeda と言うと、彼は右手の人差し指を顔の前に置いて、それを左右に振った。
それから Oh my god と言い、手を叩く。どうやら真也の発音が間違っているらしい。
そして再び口を開いた。
This was a pleasure to met you Shinya Kishibayashi, and I'd like to help your life in
「ここに来たということは……あなたは何らかの事情があって母国を離れ、こちらの国で暮らす決意をしたということでしょう。であれば私の手助けが必要なはずです。どうかよろしくお願いします」
今度は完璧に聞き取れた。真也は微笑む。すると彼も同じように微笑んだ。そして続けて、
「私はあなたの力になりますよ」
と言った。その顔は、先ほどの親しげな表情とは一変し、どこか真剣味を帯びたものになっていた。