彼はそう決意すると、冴月の目を真っ直ぐ見つめる。そして、その覚悟を告げる。その瞳には殺意すら宿っていたが、その表情は悲しみに染まっている。その矛盾に気づいてしまった真也はさらに混乱するが、必死になって心を落ち着かせると彼女に告げた。
その答えを聞いて、彼女は涙を流しながら俯いてしまったが、しばらくしてからこくりと小さくうなずいた。
真也は彼女を抱きしめたくなる衝動をぐっと堪えると、自分の心の中を整理し始めた。そして、一つの結論を出した。
それは、彼女を助けたいという強い意志。その思いは、真也に行動させる動機となった。しかし、その感情は一気に吹き飛んだ。晶のポケットから見知らぬ男の写真が零れ落ちたのだ。「お前、他の男がいるのか? それも複数。売女め!」
彼は写真を拾い上げると、その写真を見下ろした。そこに写っていたのは黒髪の男性と茶髪の女性。真也はその男女の顔に見覚えがあった。
(これは……間宮兄と美咲先輩?)
そう、その男は真也の兄である優太の友人だった。「信じられない。こんな連中と肉体関係を……」
真也は怒りに任せて写真をビリビリに破ろうとするが、寸前のところで我に返り、その腕を止める。そして大きく深呼吸をすると、その写真を晶に返した。
しかし彼女はその写真を真也に突き返し、震え声で言った。
お願い、持っていて欲しい。
だが真也はこう言い放った。「お前の遺影と一緒に飾ってやる」
「どういうことなの?」
「俺がまとめてぶっ殺すからさ。写真がないとこいつらの葬式で困るだろう」
「ひどい…ぎゃっ!」
彼女の右頬に真也のストレートパンチが命中した。「ごふっ!」
彼女は転倒し後頭部を思いっきりコンクリート壁にぶつけた。そして白目を剥いたまま動かなくなってしまった。
「死んだか……歯ごたえがねぇ」
真也は冴月晶の心音を聞いて、死んでいることを確認した。
「さぁて、お次は俺を裏切った連中を殺しに行く」」彼から笑顔が消え失せる。その表情は冷酷そのもので、彼が纏う雰囲気もがらりと変わった。
それはもう人間のものではなかった。真也の身体を乗っ取った化物は冴月晶の死体を放置したまま神社を出ていった。そして、翌日。葬儀屋はてんてこ舞いの忙しさに陥った。何しろ晶の関係者十人が惨殺死体で見つかったのだ。警察は真也を指名手配しているが足取りがつかめない。
「あ、あなた……」
「ああ……」
冴月晶の父親とその妻は遺体の前で呆然と立ち尽くしていた。「私の子供が殺された」
冴月晶の父親はそう言うと膝を折って泣き崩れた。
「私はどうすれば……」母親はその場にへたり込んで放心状態になっている。
真耶と明海はその様子に戸惑っていたものの、なんとか状況を整理しようとしていた。
惨殺現場に献花台が設けられやがて慰霊碑が立った。
真也はまだ捕まっていない。十年、二十年が経ち目撃情報も絶え始めた。冴月晶の母親は事件のあとSNSで心無い言葉を浴びせられて首を吊った。父親は懸命に犯人に関わる情報提供を呼び掛けていたが認知症を患って施設で寿命を全うした。それから100年後。
この世界では異能者と呼ばれる超人達が社会を成り立たせていた。その能力の中には特殊なものがあり、それはオーバードと呼ばれた。
ある日、ある場所。
一人の男が棺の中で眠っている少女の顔を覗き込んでいた。その男の目は狂気で満ち溢れており、口元は醜悪に歪みきっていた。
彼は自分の右手にナイフを持っていることに気がつくと、左手に握られたものを地面に叩きつける。それは真っ二つに折れた剣だった。
その答えを聞いて、彼女は涙を流しながら俯いてしまったが、しばらくしてからこくりと小さくうなずいた。
真也は彼女を抱きしめたくなる衝動をぐっと堪えると、自分の心の中を整理し始めた。そして、一つの結論を出した。
それは、彼女を助けたいという強い意志。その思いは、真也に行動させる動機となった。しかし、その感情は一気に吹き飛んだ。晶のポケットから見知らぬ男の写真が零れ落ちたのだ。「お前、他の男がいるのか? それも複数。売女め!」
彼は写真を拾い上げると、その写真を見下ろした。そこに写っていたのは黒髪の男性と茶髪の女性。真也はその男女の顔に見覚えがあった。
(これは……間宮兄と美咲先輩?)
そう、その男は真也の兄である優太の友人だった。「信じられない。こんな連中と肉体関係を……」
真也は怒りに任せて写真をビリビリに破ろうとするが、寸前のところで我に返り、その腕を止める。そして大きく深呼吸をすると、その写真を晶に返した。
しかし彼女はその写真を真也に突き返し、震え声で言った。
お願い、持っていて欲しい。
だが真也はこう言い放った。「お前の遺影と一緒に飾ってやる」
「どういうことなの?」
「俺がまとめてぶっ殺すからさ。写真がないとこいつらの葬式で困るだろう」
「ひどい…ぎゃっ!」
彼女の右頬に真也のストレートパンチが命中した。「ごふっ!」
彼女は転倒し後頭部を思いっきりコンクリート壁にぶつけた。そして白目を剥いたまま動かなくなってしまった。
「死んだか……歯ごたえがねぇ」
真也は冴月晶の心音を聞いて、死んでいることを確認した。
「さぁて、お次は俺を裏切った連中を殺しに行く」」彼から笑顔が消え失せる。その表情は冷酷そのもので、彼が纏う雰囲気もがらりと変わった。
それはもう人間のものではなかった。真也の身体を乗っ取った化物は冴月晶の死体を放置したまま神社を出ていった。そして、翌日。葬儀屋はてんてこ舞いの忙しさに陥った。何しろ晶の関係者十人が惨殺死体で見つかったのだ。警察は真也を指名手配しているが足取りがつかめない。
「あ、あなた……」
「ああ……」
冴月晶の父親とその妻は遺体の前で呆然と立ち尽くしていた。「私の子供が殺された」
冴月晶の父親はそう言うと膝を折って泣き崩れた。
「私はどうすれば……」母親はその場にへたり込んで放心状態になっている。
真耶と明海はその様子に戸惑っていたものの、なんとか状況を整理しようとしていた。
惨殺現場に献花台が設けられやがて慰霊碑が立った。
真也はまだ捕まっていない。十年、二十年が経ち目撃情報も絶え始めた。冴月晶の母親は事件のあとSNSで心無い言葉を浴びせられて首を吊った。父親は懸命に犯人に関わる情報提供を呼び掛けていたが認知症を患って施設で寿命を全うした。それから100年後。
この世界では異能者と呼ばれる超人達が社会を成り立たせていた。その能力の中には特殊なものがあり、それはオーバードと呼ばれた。
ある日、ある場所。
一人の男が棺の中で眠っている少女の顔を覗き込んでいた。その男の目は狂気で満ち溢れており、口元は醜悪に歪みきっていた。
彼は自分の右手にナイフを持っていることに気がつくと、左手に握られたものを地面に叩きつける。それは真っ二つに折れた剣だった。