「行くっ!」

「決まりだね。車は駅の裏に停めてあるから」

「駿さん~。車に着くまで、手、繋いでもいい?」

「ん? いいけど……」

「寒いから、駿さんが温めてっ」



語尾にハートマークが付いているんじゃないかってくらい、作った声を出す私。

そんな私に駿さんは手を差し出してきた。

ほら、大抵の男は、こういえば手を差し出してくれるんだから。

私は差し出された駿さんの腕に自分の腕を絡めながら、手を繋いだ。

これだけ密着すれば、駿さんもドキドキして私を求めるようになるはず……。


……そう思ったのに。

私の手は簡単に振りほどかれた。



「そんなに寒いなら、これ着て?」



そう言って、駿さんは自分の着ていたコートを脱いで私の肩にかけた。

思いがけない行動に、私は驚いて駿さんの顔を見つめる。

にこやかに微笑んでいる駿さんの目は、コートのように私を包み込んでくれるような、そんな温かな目だった。


どきんっ。

胸が高鳴ると同時に、ぎゅっと胸が掴まれたような気がした。


なに、これ。

こんなの、知らない。

知らないけど、知りたい。