私は駅前を歩く人たちを見渡した。

恋人同士なのか腕を組んで歩く男女に、スーツを着た男の人。

高いヒールを鳴らして、緩く巻いた髪の毛をなびかせている人。


腕を絡ませ歩く男女は本当に恋人同士なのだろうか。

スーツを身にまとう男性は、営業帰りのサラリーマンなのだろうか。

綺麗な服を身にまとう女の人は、これからどこに行くのだろうか……。


私は街歩く人たちを、自分と同じような人種だと勝手に決めつけた。

他人に興味がない。

だけど、人の温もりを求めたがる。

そんな汚れ切った人間。

そう思ってしまったのは、自分が汚れ切っている人間だからなんだろうな。


……それにしても。



「遅いなぁ……」



ぼそりと呟いた言葉は誰にも拾われることない。

そう思っていると、目の前に影がさした。



「君が朱里ちゃん?」



そう言って目の前に現れたのは、高身長の爽やかな男性。

私は慌てて口角をあげて笑顔を作った。