ピロンっ。

機械音と同時に、携帯の画面が光った。

私はメッセージを確認する。



『駅前にいるの? ちょうど俺も駅の近くにいるから会えるよ』



トーク画面に表示されている名前は“駿”。

顔写真も見たことないし、電話で声も聞いたことがない。

数回メッセージのやりとりをしたことある男の人。

私は、この寒い中、時間を無意味に過ごすのは嫌だったから“駿”と会うことにした。



『駅前のクリスマスツリーの近くのベンチに座ってるよ!』

『服装は?』

『白のニットに黒のミニスカ履いてるっ』

『了解だよー』



返信が来なくなったことを確認してから、私は携帯を鞄にしまった。

冷え切った指先に、はあ、と息を吹きかける。


こんなんで手が温まるわけがないよな。

温まると思い込んでいるだけ。

そう。

思い込んでいるだけなんだ。