私は駿さんにメッセージを送った。

『今日の夜、駿さんの仕事が終わったら会いたい』と。

駿さんからの、普段と変わらない絵文字がついた『いいよ』の返事。

待ち合わせは駅前のクリスマスツリーの近くのベンチ。

駿さんと初めて出会った場所……。


そして、夕方。



「……お母さん」



こたつに座ってテレビを見ていたお母さんは、振り返って私を見る。

ただ防寒着として、可愛げもないコートで身を包んでいる私。

昨日まではコートも着ないで出かけようとしていたのに……。



「出かけてくるね。……9時には帰ってくるから」



自分で言った言葉に泣きそうになった。

『出かけてくる』の言葉も、『〇時に帰ってくる』の言葉も、言ったことがなかった私。



『どこへ行くの?』

『誰と会うの?』

『何時に帰ってくるの?』



そう聞かれたら答えられない自分自身がいたから、ちゃんと伝えることが出来なかった。


だけど、今は違う。

やましいことは何もない。

自分の意思はハッキリしている。


だから揺るがない。