触れたくなかった。

お母さんの愛情は私を壊してしまうから。


自分が間違った道を進んでいることくらい、分かり切っている。

学校へ通うふりして、何人もの男と会って体を重ねていること。

男からお金をもらって自分の価値を決めることしか出来ないこと。

浮気相手になってしまえば、必ず誰かを傷つけてしまうこと。


自分が間違っているなんて思いたくなかった。

自分は自分、他人は他人。

私がやっていることは、私だけが認めてあげたらいい。

そう思っていた。



「朱里は昔から素直な子で、すぐに顔に出るから……。お母さんには分かる」

「……」

「朱里の全てを分かるって言ったら、それも違う気がするけどね。でも、朱里が苦しんでいることぐらい分かるよ」



視界が涙でにじんだ。

目の前に置いてある白米が入ったお茶碗も、お味噌汁が入ったお椀も、涙で見えなくなった。