抱かれている時間は長いようで短かった。

シャワーを浴びに行っている駿さんを待っている私はベッドにひとり。

散らかった布団やシーツが、私たちが一線を越えてしまったことを象徴している。


泣きたくなった。

心が痛い。

好きになった人に抱いてもらった。

だけど、その人の心には私がいない。


駿さんは寂しさを埋めるため、私を抱いていたのだと痛感した。

駿さんが我を忘れたように私を求めていたときに呟いた名前には、聞き覚えがなかったから……。

きっと、それは愛する彼女さんの名前。

駿さんが抱いていたのは、私じゃなかった。


私が駿さんを振り向かせることはできないのかな。

婚約者から駿さんを奪うことなんて不可能なのかな……。