「ほら、こんな子だよ」



駿さんがそう言って見せてきたのは、携帯の待ち受け画面。

そこには駿さんと頬を寄せて笑っている女の人の姿があった。


特別、可愛いわけでもない。

美人なわけでもない、どこにでもいるような普通の女性。

そんな印象だった。


だけど、その笑顔からは癒しを感じて、温かい雰囲気の女性なのだと思った。

私にはないものを持っている。

この人はなにより、駿さんの心を奪っている。

携帯の待ち受け越しに、彼女から思い知らされた。



「……素敵な方だね」

「うん。大好きなんだ」



じゃあ、なんで、私なんかと会っているの?

ホテルに行こうなんて言ったの?


嫉妬。

憎悪。

真っ黒な感情が膨れ上がる。

貼り付けた笑顔の裏にある、どす黒い感情。


こいつから、駿さんを奪いたい。

奪いたいのに、駿さんを見ていると奪えないのではないか、と思ってしまった。

駿さんに私が心から愛されることはない。


だからこそ、形だけでもいいから。



「駿さん、ホテルに連れて行って……」