「今日は1万円、か」
福沢諭吉の顔が描かれた紙切れ1枚。
ため息しか出なかった。
今日の私の価値は1万円だ。
高校生の私には、この1万円が価値のあるものなのか、ないものなのか分からなかった。
この冷たい風の中、デコルテが見える白ニットを着て、黒のミニスカートを履いているんだけどなぁ。
風邪を引くんじゃないかってほど、とてつもなく寒い。
それなのに、今日の男から見た私の価値は1万円。
『ホテル代も俺が出すんだから、今日はこれで勘弁してよ』
そう言って、ホテルを出るときに男から手渡されたものだ。
名前も知らない男と体の関係を持って、お金という対価をもらっていた私。
男は快楽を得ることが出来て、私はお金が手に入る。