お店を出た駿さん。



「300円返す……っ」



私がお財布を開けようとすると駿さんは笑った。



「いいよ。お釣りはあげる」

「でも……っ」



それじゃ、割り勘の意味がない。

ほとんど駿さんが払ったようなものじゃん。

そう口を開きかけた私の口を、駿さんはいきなりふさいだ。



「え……」



今、一瞬のことで理解が追い付かないけど、勘違いじゃないよね?

駿さんの唇が、私の唇に触れたよね……?

キス、したよね……。



「お釣りはいいから」

「う、うん……。ありがとう」



それ以上は言えなくて、私は600円をお財布にしまった。

上の空の私。

キスなんて何度もした。


だけど、駿さんのキスは一瞬だったけど温かくて、柔らかかった。

心がぎゅっと掴まれた。

私、駿さんのことが好き……。