「朱里ちゃんって、なんで、あのアプリやってるの?」



唐突な駿さんの言葉。

だけど、この質問は何十回と聞いた。

男と会うたびに、世間話のように聞かれる質問。


いつもの私だったら、なんて答えていただろう。

でも、なんとなく、駿さんは他の男と違うような気がするから。

私は自分の思いを、そのまま話した。



「好きな人が欲しくて。それで、その人に愛されたいから、だよ」

「それなら、出会い系とかじゃなくて、ちゃんとしたマッチングアプリとかやれば……」



そこまで言って駿さんは言葉を止めた。

きっと、察してくれたのだと思う。



「年齢制限があるから……。私、まだ17歳だもん」



ぎりぎりマッチングアプリはできない年齢だ。

だからマッチングアプリは未知の世界。

どんな男の人がいて、どんな感じの会話が通用するのか分からない。

だから今は、この出会い系アプリで、本気の恋愛を探したいんだ。


そんな私の手を引き、駿さんは歩いた。

先ほどまで鬱陶しかった青空が、少しだけ輝いて見えるような気がしたのを今でも覚えている。