「あの、もし良ければ…一緒に行きましょうか?」

俺の突然の問いかけに彼女と老紳士は一斉に俺の方を向く。いや、そんなに視線を送られると提案したことを後悔しそうなんだけど。

「で、ですが…」

彼女が口ごもる。やっぱり迷惑か?ていうか、考えてみたら、いや考えなくても見知らぬ女とどっか行くとか俺の性にあわなすぎる。

俺は何を言ってるんだ…?今からでも自分からいや、やっぱりやめときますとでも言おうか。

「そうして頂きましょう!シャルロット様!この方は女性ですし、そうすればイシリスも安心でございます!」

あ、女として生きていかなきゃ行けないのか…。そりゃ、そうだよな…。こんな見た目なんだし。

「ですが、私はアーリャと行くつもりでしたし…」

シャルロットと呼ばれる彼女は困ったように眉尻を下げた。困らせてどうする。俺は目の前の不毛なやりとりを終わらせたかっただけだぞ?

「いや、無理なら無理で」

俺は顔の前で手を振る。別に一緒に行きたかったわけじゃないし。一緒にいたら心臓持たなさそうだし?

「いいえ!一緒に行って頂きましょう!わたくしも安心して家族の元へ参れます!!」

じ、じいさん熱半端ないな…。よっぽどシャルロットが大切なんだな。まあ、こんだけ綺麗だったら1人で行かせるの怖いの分からなくも無いかもしれん。

「ほ、本当に大丈夫ですか?危険なことも多い道のりですが…」

地獄に危険じゃないところってあるんだろうか。よく考えたらこれって閻魔様の所に行くあの道中だよな?ファンタジー要素強すぎて頭沸きそうだ。

「承知の上だ。好きに使えば?」

どうせ1回捨てた命だ。地獄でどうなろうがどうでもいい。ましてやこんなに愛されている人を前にして自分の命が惜しいなんて今更思えないだろ。

「では、イシリスの意思もありますし、そうさせて頂きましょう。貴女、お名前は?」

名前か…。そりゃそうだ聞かれるよな。でも、前の名前使ったらなんか浮きそうな世界観だよなぁ。

「ろ、ロベリア…」

自分で言っていて気持ち悪い。なんだその俺に合わない名前は。由来は死ぬ前にやっていたスマホゲームの主要キャラだ。

「いい名前ですね。それではロベリア、行きましょうか」

彼女は俺に手を差し伸べた。俺は、手を掴む自信まではなく顔を背ける。俺は断じてこの美女にほだされたわけではないんだからな…。