「恋乃香様。服お持ちしました」
「ありがとう!」
「あ、恋乃香~!おはよう」
琴乃ちゃんの後ろからひょこっと顔が出てきた。
「美蘭!おはよう」
わたしは男装をして、身体が大きくなった。
「……恋乃香様、少しこちらへ」
仕事中、琴乃ちゃんに呼ばれた。
「はい。どうかした?」
「お兄様がお呼びです」
琴乃ちゃんは誰にも聞こえないくらい小さな声で言った。
「えっ?ええ、わかったわ」
朝陽様がお呼びなんて……わたし、何かしてしまったかしら。
「失礼します……」
朝陽様がいる部屋に入った。
「君は……三葉恋乃香で合っているか?」
そう。わたしは三葉恋乃香という。
「……はい。えっと。おれ、何かしましたか?」
慣れない『おれ』という一人称。
「いや、少し確認があってな──」
え⁉まさか朝陽様に男装していることバレていないわよね。
あっという間にわたしと朝陽様の距離は縮まる。
「あ、あの。朝陽様っ?」
「やはりな──」
なぜか朝陽様はわたしの頭に手を置いた。
「……?」
何がなんだかわからなかったが、わたしは男装用の短い髪の毛を朝陽様に取られていた。
「えっ⁉そ、それ、返してください!」
驚いて声が大きくなってしまった。
「なぜ、男装を?」
「……わ、わたし。異能があるんです……」
語尾の方が小さくなってしまった。
よりによって朝陽様にバレてしまうなんて。
「異能?それはどういう異能なんだ?」
「……身体強化、です」
昔の記憶がどんどん蘇ってくる。
『──近くに来ないでよ!怪物!』
『恋乃香って何者っ?病気が移るわ』
辛い記憶ばかり。だから、異能があることなんて言いたくなかった。
「なるほど。元の体に戻ることはできるのか?」
「は、はい。できます……」
「そうか。異能のことは僕以外で誰が知っている?」
……あれ?責めないの?異能のことを。
「えっと、琴乃ちゃんと美蘭と朝陽様です」
「美蘭?……琴乃、美蘭というやつの苗字は?」
そう言うといつの間にか琴乃ちゃんが立っていた。
「如月美蘭です、お兄様」
「そうか。……ってなぜお兄様呼びなんだ?いつもはしないのにな」
ふっと柔らかく笑う朝陽様はとてもかっこいい。
「──恋乃香様の前だからです。それでは失礼いたします」
一礼して琴乃ちゃんは部屋を出て行った。
「……無理を言って申し訳ないが身体を元通りにしてみてくれないか?」
まさかこんなことを言われるなんて。
「い、いいですけれど……」
そして、わたしは身体を小さくした。
「全然違うな。……その姿は僕だけが見れればいい」
「えっ?」
えー⁉なんて言ったの?
気づけば距離はさっきよりももっと近くなっていた。
「僕は……恋乃香のことが好きなんだ」
……ん?聞き間違い?好きって……。
「え、えぇっ⁉でも、それって……」
家族などに対する好きなのでは……?
「もちろん、俗に言う‘’恋愛対象‘’だな」
れ、恋愛対象⁉もう、訳が分からない。
「えっと……わたしは、恋愛とかよくわからないです……だから、朝陽様のお気持ちには──」
「少しずつでもいい。僕の隣にいてほしい」
そう言われましてもね。今まで引きこもっていたわたしは外の世界も知らない。
葉奈乃が楽しそうに話していた恋の話も全くわからなかった。
そんなわたしが皇帝様に恋など……。
「答えはいつでもいい。……まあ、君が答えないのなら、僕が君の心を奪いに行くけど」
最後に意味深な笑顔を残して、朝陽様は出て行った。
わたしはどうすればいいのかしら。
「え?朝陽様に告白された⁉」
「そうなの。でも、わたし答えられなかった」
「それはどうして?」
「わたしは……恋愛なんてわからない。恋がどういうものなのかも知らない」
わたしが言うと美蘭は普段は見せない顔をしていた。
「なにそれ。……恋乃香は自分自身の気持ちをわかろうとはしないの?知らないって放棄するのは簡単なんだろうけどさ、ちょっとは探ってみたら?」
気持ち?
それって好きって気持ち?わたしの?
「頑張れ~!私も応援するからさ」
美蘭が言いたいことが半分しかわからなかった。
「ありがとう!」
「あ、恋乃香~!おはよう」
琴乃ちゃんの後ろからひょこっと顔が出てきた。
「美蘭!おはよう」
わたしは男装をして、身体が大きくなった。
「……恋乃香様、少しこちらへ」
仕事中、琴乃ちゃんに呼ばれた。
「はい。どうかした?」
「お兄様がお呼びです」
琴乃ちゃんは誰にも聞こえないくらい小さな声で言った。
「えっ?ええ、わかったわ」
朝陽様がお呼びなんて……わたし、何かしてしまったかしら。
「失礼します……」
朝陽様がいる部屋に入った。
「君は……三葉恋乃香で合っているか?」
そう。わたしは三葉恋乃香という。
「……はい。えっと。おれ、何かしましたか?」
慣れない『おれ』という一人称。
「いや、少し確認があってな──」
え⁉まさか朝陽様に男装していることバレていないわよね。
あっという間にわたしと朝陽様の距離は縮まる。
「あ、あの。朝陽様っ?」
「やはりな──」
なぜか朝陽様はわたしの頭に手を置いた。
「……?」
何がなんだかわからなかったが、わたしは男装用の短い髪の毛を朝陽様に取られていた。
「えっ⁉そ、それ、返してください!」
驚いて声が大きくなってしまった。
「なぜ、男装を?」
「……わ、わたし。異能があるんです……」
語尾の方が小さくなってしまった。
よりによって朝陽様にバレてしまうなんて。
「異能?それはどういう異能なんだ?」
「……身体強化、です」
昔の記憶がどんどん蘇ってくる。
『──近くに来ないでよ!怪物!』
『恋乃香って何者っ?病気が移るわ』
辛い記憶ばかり。だから、異能があることなんて言いたくなかった。
「なるほど。元の体に戻ることはできるのか?」
「は、はい。できます……」
「そうか。異能のことは僕以外で誰が知っている?」
……あれ?責めないの?異能のことを。
「えっと、琴乃ちゃんと美蘭と朝陽様です」
「美蘭?……琴乃、美蘭というやつの苗字は?」
そう言うといつの間にか琴乃ちゃんが立っていた。
「如月美蘭です、お兄様」
「そうか。……ってなぜお兄様呼びなんだ?いつもはしないのにな」
ふっと柔らかく笑う朝陽様はとてもかっこいい。
「──恋乃香様の前だからです。それでは失礼いたします」
一礼して琴乃ちゃんは部屋を出て行った。
「……無理を言って申し訳ないが身体を元通りにしてみてくれないか?」
まさかこんなことを言われるなんて。
「い、いいですけれど……」
そして、わたしは身体を小さくした。
「全然違うな。……その姿は僕だけが見れればいい」
「えっ?」
えー⁉なんて言ったの?
気づけば距離はさっきよりももっと近くなっていた。
「僕は……恋乃香のことが好きなんだ」
……ん?聞き間違い?好きって……。
「え、えぇっ⁉でも、それって……」
家族などに対する好きなのでは……?
「もちろん、俗に言う‘’恋愛対象‘’だな」
れ、恋愛対象⁉もう、訳が分からない。
「えっと……わたしは、恋愛とかよくわからないです……だから、朝陽様のお気持ちには──」
「少しずつでもいい。僕の隣にいてほしい」
そう言われましてもね。今まで引きこもっていたわたしは外の世界も知らない。
葉奈乃が楽しそうに話していた恋の話も全くわからなかった。
そんなわたしが皇帝様に恋など……。
「答えはいつでもいい。……まあ、君が答えないのなら、僕が君の心を奪いに行くけど」
最後に意味深な笑顔を残して、朝陽様は出て行った。
わたしはどうすればいいのかしら。
「え?朝陽様に告白された⁉」
「そうなの。でも、わたし答えられなかった」
「それはどうして?」
「わたしは……恋愛なんてわからない。恋がどういうものなのかも知らない」
わたしが言うと美蘭は普段は見せない顔をしていた。
「なにそれ。……恋乃香は自分自身の気持ちをわかろうとはしないの?知らないって放棄するのは簡単なんだろうけどさ、ちょっとは探ってみたら?」
気持ち?
それって好きって気持ち?わたしの?
「頑張れ~!私も応援するからさ」
美蘭が言いたいことが半分しかわからなかった。