寝るために着替えていると、外から声がした。
「恋乃香様?お着替えは済みましたか?」
「あ、はい!終わりました!」
 着替え終わったわたしは身体も小さくなった。
「失礼します。着ていた服はわたくしが──」
「あれ?琴乃?──と、恋乃香くん……?」
 予想外の人物に目を丸くする。
「あ……美蘭様。どうしてここに……?」
「た、たまたま通りかかったのよ。ねぇ、それよりも説明してよ。なんで恋乃香くんがこんなに小さくなってるの?さっきは……私よりもうんと背が高かかったわ」
 困惑する美蘭に言うか迷う。
「えっと、わたし、異能があるの……。身体強化っていうんだけどね、なにか力仕事をしたりする時に身体が大きくなって力が強くなる異能なの」
 わたしが話始めると呆然とする美蘭。
「そう、なのね。だから男装を?」
「ええ。でも、これは美蘭と琴乃ちゃんしか知らないから、誰にも言わないでね?」
「うん。え、じゃあ、朝陽様は知らないの?」
 美蘭から質問の嵐が飛んできた。
「そうなのよ。まあ、言う必要もないのかなって」
「そういうことね。わかったわ、誰にも言わないって約束する」
 わたしと美蘭は小指を重ねた。
 そして、葉奈乃の知り合いが琴乃ちゃんだということ、引きこもっていたことを美蘭に打ち明けた。
「そうだったのね。私は妹がね後宮に憧れてたの」
 それから美蘭の衝撃的な過去を聞くことになった。
「私たちが住んでたところは山と川しかない片田舎だった。妹の美夜(みや)は親と街に出かけた時に朝陽様と後宮を目にしたんだって。それで、私に後宮で働いてみてよって言ってきた」
 美蘭は悲しげな顔をした。
「私は何で私が行かなきゃいけないのって反対したの。でも、美夜はこんな片田舎の景色よりもすごいからって私を後宮で働かすことをにしたの。でもね、その後に美夜は病で帰らぬ人になったの。だから美夜にお姉ちゃん、すごい景色を見てきたよって報告してあげられるように後宮で精一杯働こうって思ったの」
 美蘭の話を聞いて、涙ぐむ琴乃ちゃんを見て笑う美蘭。
「なにを泣いているのよ~」
「申し訳ございません。ですが、感動的なお話だったのでつい……」
「あははっ。ありがとね、琴乃。恋乃香くん……じゃなかった、恋乃香も、聞いてくれてありがとう」
 その日はたくさん三人で話をしたのだった。