「何が構わないんですか……。俺みたいなのには関わらない方がいいですよ。では、俺はこれで」
「うん。あんまり無理しすぎちゃだめだよ? 全(ぜん)が仕事回し過ぎてるなら私から注意しておくから」
「それは最終兵器に取っておきます。失礼します」
「またね~」
にこにこと手を振る在義さんに背を向けて歩き出す。
娘と出かけられているのがよっぽど嬉しいようだ。
在義さんの娘は確か……中二だったか? その年になって父親と出かけてくれるとか、在義さんは幸せ者というやつだろう。
クリスマス気分は街並みだけで十分だったけど、華取親子の話を聞いて気持ちがほかほかしてきた。
さて、徹夜がんばるか。
――クリスマスなんてかけらも気にしていなかった二十三の冬。俺には仕事があれば大丈夫だったから。
でも、この二年後、俺の人生は百八十度変わってしまう。
相手との時間がほしくて仕事をセーブするようになるなんて、俺には想像の範囲外だった。
今更だけど、いつかそれを、運命と呼んでみたい。
咲桜が俺の、運命だと。
END.