さすがクリスマスイブ。人混みすげえ。
装飾された街中と、楽しそうに行き交う人々。うん。クリスマス気分はこれでもかってほど味わったわ、これだけで。腹いっぱい。
この感じではスーパーは混んでいそうだから、近くのドラッグストアでインスタントコーヒーと紅茶を買うことにした。そのまま犯研へ直帰。
しようとしたら、駅前通りの一角にすごくにこにこしている恩師を見つけてしまった。
こちらを見てにこにこしているから、俺に気づいているようだ。在義さんをスルーという選択肢はないので、そちらへ向かう。
「在義さん、こんばんは」
「やあ、お疲れ様、流夜くん。今日はお休みじゃないのかい?」
「通常営業で仕事です。在義さんは?」
「今日は急ぎのことがなかったから、娘と来てるんだ。クリスマスくらい出かけに連れて行ってあげないと、嫌われたら最悪私死ねるから」
「ああ……」
在義さんには溺愛の娘がいたな、そういえば。そして物騒な物言いだけどガチだろうな。
「昼間は友達とクリスマスパーティーをしてたらしくてね。それでもあんまりわがままも言ってくれないからお父さん淋しいよ」
「大変ですね……」
在義さんの娘はだいぶ聞き分けがいいようだ。
「今、友達から電話かかってきて話してるんだけど、逢ってく? うちの娘。可愛いよ?」
「え、遠慮しておきます……」
声がびびってしまった。在義さんの娘溺愛伝説は俺でも知っている。
在義さんの娘、というだけで、下手に顔見知りになるのも怖い相手だ。
「そうかい? 流夜くんなら私も構わないよ?」