「承知のことだろう? 僕はマナちゃん誘って食事に行くし?」
「ラーメン屋か」
「うん、マナちゃんラーメン好きだけど、ちょっとだけおしゃれなカフェだよ。ケーキくらい出るとこだよ。そのくらいしか時間取れないんだから仕方ないだろ」
「なんで俺にキレる。愛子がどこで飯食おうが知ったことじゃない」
「はあ。……お前も休憩がてら街に出てみたら? クリスマス気分くらい味わえば?」
「あンのクソバカのせいで仕事が立て込んでる。そんな暇ない」
「……斎月姫、まだ戻ってないもんね」
「この一年はまるまる休み、って最初に警察と約束しちまってるからな。司家の花嫁修業、二週間で終えやがったけど」
「通常五年かかるってだけでも頭おかしいのに、それを二週間で完了させるとか、斎月姫もお前も頭バグだろう」
「俺は司家には関係ねえよ。ほら、もう出た方がいいんじゃないのか? 愛子待たせるぞ」
「そうだね、そろそろ行くよ。じゃ、良いクリスマスを」
「仕事だ。……じゃあな」
吹雪に雑に返して、見送ることもせずに仕事に没頭する。
とっとと終わらせないと、年末年始なんてあったもんじゃない。俺だって人並に休みたいときはある。
「……あ、飲みもんなんもねえ」
部屋には電気ケトルが常備されていて、コーヒーでも茶でも好きに飲める。
けど、茶葉もインスタントコーヒーも切らしてしまった。
今日はクリスマスイブで夜八時の今、職員は全員帰っている。そうなっては借りにいける相手もいない。
俺は当然のようにここで徹夜する気なので、白湯だけではなんとなくきつい。カフェインのとりすぎもよくないのはわかっているけど。
「……買いに出るか」
自販機でもいいんだけど、吹雪に言われた通り気分転換したい気持ちもある。
城葉研究学園都市は基本的に学校や研究機関の集まっている場所だが、駅前は繁華街だ。歩きがてら行って来るか。
コートとスマホと財布だけ持って、犯研を出た。