「………」
机にバサッと広げられた書類に時折目をやりつつ、パソコン画面をどんどん進めていく。
去年度で大学は卒業して、今は城葉犯罪学研究所というところに籍を置かせてもらっている。といっても、正式な職員ではないのだが。
「流夜。遥音から報告あったよ。藤城決まったって」
「そうか」
俺が私室として使わせてもらっている部屋への来訪者は吹雪だった。いつも通りスーツ姿で、一分の隙もない。
備え付けの対面のソファの片方に座る吹雪。俺はデスクで作業を続ける。
「もっと喜んであげなよ。遥音、お前が教師になるって聞いて藤城の推薦取ったんだよ?」
「反対だろ。あいつが就職ひとつだ、とかいうから教師になる羽目になったんだ」
「お前が選んだ道だろう。遥音のせいにするのは筋違い」
相変わらず毒舌かます吹雪。構わずキーボードを打ち続ける。
「それにしても、クリスマスだってのにお前はまた仕事だけか」
「ブーメラン」
「お前と過ごしたいって女の子がどれだけいると思ってるの。女顔の僕に喧嘩売ってる?」
「売るわけねえだろ怖ぇな。つか、彼氏になっても向こうから離れてったんだから俺に何が出来るってんだよ」
「彼女として大事に扱うとか? お前、デートすらまともにできないもんね」
「大事に扱う理由がない」
「はい、冷酷、冷酷。まあいいよ。いつかお前に最愛の恋人ができてデレデレになるのを降渡と見て楽しむから」
「趣味悪」