「ごふっ! そ、そういう咲桜こそないの?」

「私はないね」

断言する。すると笑満は平坦な目をした。

「どーだか? いきなり彼氏できました~、とかありそうだよ、咲桜。それまでなんの脈絡もなしに」

「私どんな状態だ。まー、まさかだけど彼氏なんて出来たら報告するよ。笑満には」

「俺には?」

「頼に弱み握らせるわけなかろう」

「咲桜は彼氏のこと弱みだと思ってるの?」

「うん」

頼に素直に肯く。いやだってさ、大好きな人とか、人質に取られたら一番やばいじゃん? という、在義父さんの仕事的思考の私だ。

「咲桜も通常運転だね……。あー、咲桜にも頼にも幸せになってほしい~!」

「ど、どうした、笑満」

「大丈夫? 炭酸で酔った?」

頼に問われて、笑満はくわっと口を開いた。

「んなわけあるかい。だって咲桜も頼もあたしの親友だもん~。絶対幸せにならないとゆるさない!」

「何ギレ?」

「ははっ。なら笑満も幸せになるってことだね。頼、将来の笑満の彼氏にこの可愛い絡み見せて自慢したいから写真撮って」

「うい」

「ちょっと咲桜、頼! 変な写真は撮らなくていいのー!」

中学二年生のクリスマス。来年度に迫る受験のことは一旦置いておいて、私は親友たちとクリスマスパーティーにいそしんでいた。

彼氏なんて、空想上の生き物だった。