前回のあらすじ
スリの子供を捕まえた二人。
お持ち帰り事案である。
「……お持ち帰りですかい?」
「馬鹿言え。子供の教育に悪いことを言うな」
「へえ、すいやせん。しかしまたなんで、ファシャのガキなんて」
宿で少し話をしているうちに、ハキロとムスコロが帰ってきた。挨拶は問題なく終わったようである。問題は紙月たちが連れ帰った子供、シァォチュンと名乗った少女だった。
「うん、スリにあってな」
「姐さんの懐狙おうなんざ」
「まあまあ」
「将来大物になりやすぜ」
「おい」
スリはよくあることとしてしかしムスコロたちが首をかしげたのはその下手人をわざわざ宿に連れ込んだ理由である。何しろ下手人は幼いとはいえ少女であるから、始末として慰み者にしようというのは、あると言えばある。
しかしこの少女を連れてきたのは紙月である。
男であることはわかっているが、子連れであるせいかどうにもその方に今まで鈍かったし、第一人柄としても、子供に乱暴を働こうという人物ではない。そも子連れで子供に乱暴できる人間というものがムスコロたちには理解できない。そこまで落ちぶれていないのだ。
「いやなに、大した被害じゃなかったんだが、かといって何も罰がなしじゃいかんと思ってな」
「はあ」
「だから、晩飯ついでにファシャ街の案内をしてもらうことにした」
「はあ?」
なぜファシャ街なのか、なぜそれが罰になるのか、様々な意図の含まれた「はあ?」であったが、勿論黙殺された。すっかり中華料理を楽しみにしているのであり、そのほかのことなどどうでもいいのである。
シァォチュンを連れた一行は早速ファシャ街へと向かい、この小さな案内人に連れられて異国情緒あふれる町並みを楽しんだ。
シァォチュンは最初こそどんな罰が与えられるのかとおびえていたが、この不思議な一行が本当に案内をさせては純粋に観光を楽しみ、時折店先で甘栗や饅頭を買っては案内役にさえ分けて見せる段になっては、すっかり気が楽になった。ましてや案内賃として少なからず帝国貨幣を渡されては、大いに案内業に励んだ。
もとよりスリなどは金に困って魔が差しただけのことであり、シァォチュンもその家族も純朴な物売りに過ぎない。励んだ分だけ喜んでもらえるとなれば、これに勝ることはない。
シァォチュンは実際、その励みに劣らず立派に案内人を果たした。この娘は人の機微を察することに長けており、子供に対して表情を大きく出して見せる紙月だけでなく、強面であるムスコロや、押しの弱いハキロ、そしてまた鎧で顔の見えないはずの未来の望むものまでをも見事に当てて見せ、一行を大いに楽しませた。最初乗り気でなかったムスコロ達さえも笑顔にさせるのだから、これは天稟、持って生まれた才能と言っていい。
ついに夕食の場を選ぶ段になっても、シァォチュンの案内役ぶりは堂に入っていた。予算を聞き、どのようなものを望むのかを察し、ただ高価で見栄えの良い観光客向けの店ではなく、地元の人間が使う本当に味の良い店へと案内して見せたのである。
店の主も珍しく羽振りのよさそうな客に喜び、特別に個室を用意してくれようとしたが、これは紙月が丁寧に辞した。せっかく良い案内役に恵まれての縁であるから、ここはひとつ今夜の客に一杯ずつ奢らせてほしいというのである。これはムスコロから耳打ちされたことであり、よそ者が手早くなじむ方法であり、また金を持っている時の冒険屋としての正しい流儀であった。
これには客たちも大いに沸き、この見慣れぬ客に乾杯をささげ、またこの上客を招いたシァォチュンを褒め称えた。
気を利かせた店主が次々にふるまった料理は、紙月たちが驚くほどにかつての世界で見知った中華料理そのもの、しいて言えば四川系統に近いようであったが、食材には見慣れないものが多く、その都度にシァォチュンが、わからぬものは他の客たちが親切に教えてくれた。
「こいつは何だい?」
「双頭海老の紅焼だな。甘辛くてうーまいぞ!」
「紅椒肉絲はどうだい? 赤いが甘いんだ」
「こっちの家常豆腐をお食べよ! 表じゃあんまり出してないよ!」
「おお、豆腐か! 豆腐は久しぶりだ! いただくよ!」
「おお、嬢ちゃん帝国の人なのに豆腐を知ってるんだな!」
「久しぶりに湯豆腐食いてえなあ」
「通な食い方知ってるねえ!」
ムスコロたちは初めて見る食べ物に恐る恐るフォークを伸ばし、そして初めての味わいに混乱しながらも、それがうまいのだということを何とか身振りで表現した。
紙月と未来は――未来もさすがに鎧を脱いだ――、貧乏人たちよりよほど上手に箸を使うので、双方から大いに驚かれた。
「姐さん、よくそんな棒っ切れで食えますな」
「お前こそよくそんな刺すことしかできないもんで食えるな」
「そう言われりゃ、そうか」
ムスコロたち帝国人も試しに箸を使ってみたが、これがなかなか難しいもので、ハキロは早々に諦めたが、ムスコロはなんとか肉の端切れをつかむことに成功した。筋肉ダルマのわりに何かと器用な男ではある。
しかし意外なことに、酒にはハキロの方が強く、ムスコロはファシャの酒に早々に酔い始めた。思えば最初にあった時も酔っていたが、あれもかなり少量の酒だったのかもしれない。
「しかしまあ、帝国もうまいものは多いが、ファシャには大いに負けるな」
「なにしろファシャには食の神が降り立ったからな!」
「食の神だって?」
「なんでも、ファシャが西大陸を統一したころに、食の神ジィェンミンが降り立って、今のファシャ料理の基礎を作ったんだそうだ。いまでも食の神は、神々の食卓をめぐっては新たな料理を生み出しているんだそうだ」
神話の話なのか、それとも偉大な料理人の話なのか曖昧な頃の話だそうだが、それでも各地に証拠となるような品々や伝説が残っており、人間から神に陞神したのではないかということであった。
「陞神? おい、ムスコロ」
「んっ、むうう、陞神? 陞神てなあ、あれですよ。人間が偉業を成し遂げるとですな、神々が新たな神として迎え入れるんでやす。そのことを陞神というんですな」
「人が神になるのか」
「神話にゃよくありますし、姐さんが世話んなってる風呂の神だって、ありゃ、世界で最初に温泉につかった山椒魚人が陞神したものですぜ」
「はー」
この世界では神は実在するものとして何となく漠然とその存在を思っていたが、どうも人間から神になったりと結構身近な存在であるらしい。
「ほら、ムスコロさん、水飲んで。陞神といやあ、あれだよ。人間から神になりかけている、半神ってのは今でもいるぞ」
「半神?」
「完全に陞神しちまうと下界に干渉しづらくなるんだが、半神は不死の存在であるが、まだ地上の存在なんだな。帝国でいやあ、放浪伯が有名だな」
「放浪伯、ってぇと、伯爵、貴族なのか?」
「そうさ。帝国のあちこちに飛び地で領地を持ってる。旅の神ヘルバクセーノに愛された結果、旅をしている限り不死身という加護を得たそうだ」
「そりゃまた不便そうな加護だ」
「全くだ」
陞神に、半神。
あるいは半神とやらと会えれば、神々との接点が持てるかもしれない。そうすれば、元の世界に帰る方法がわかるかもしれない。
黄酒に半ば酔いながらそう考える紙月を、未来は仕方がないのだからと眺めるのだった。
用語解説
・シァォチュン(小春)
ファシャ街に住む少女。雑貨屋の娘。魔がさしてスリに手を出すくらいには貧乏だが、根は素直で善人である。
案内人の才能があるようだ。
・双頭海老の紅焼
頭が二つある変わったエビのエビチリ。
・紅椒肉絲
赤パプリカと豚肉の細切り炒め。真っ赤な見た目で、さっぱりとした甘みがある。
・家常豆腐
家常とは家庭風のとか、家でいつも食べる味とか、そのような意味。
家庭風豆腐煮込みと言っていい。実際には豆腐は生揚げとして使用することが多い。
細かい味付けに関しては家それぞれである。
・食の神ジィェンミン
ファシャが西大陸を統一した頃に存在したと言われる料理人。またその陞神した神。
現在の多彩なファシャ料理の基礎を作り上げたと言われる。
一説によれば、美味なる料理を求めた境界の神プルプラが異界より招いたともされる。
・人神
隣人種たちのうち、神に目をかけられたり、その優れた才覚や行跡が信仰を集め、神の高みに至った者たち。武の神や芸術の神、鍛冶の神など幅広い神々がいる。元が人であるだけに祈りに対してよく応えてくれ、神託も心を病ませるようなことはあまりない。人から神になることを陞神という。
・風呂の神マルメドゥーゾ(Mal-Meduzo)
風呂の神、温泉の神、沐浴の神などとして知られる。この世界で最初に湧き出した温泉に入浴し、そこを終の棲家とした山椒魚人が陞神したとされる。この神を信仰する神官は、温泉を掘り当てる勘や、湯を沸かす術、鉱泉を生み出す術などを授かるという。
・山椒魚人(Prao)
最初の人たちとも称される、この世界の最初の住人。海の神を崇め奉り、主に水辺や浅瀬に住まう隣人。肌が湿っていないと呼吸ができないが、水の精霊に愛されており、よほどの乾燥地帯でもなければ普通に移動できる。極めてマイペースで鈍感。好奇心旺盛でいろいろなことに興味を示すが、一方で空気は読めず機微にもうとい。
・放浪伯
ヴァグロ・ヴァグビールド・ヴァガボンド(Vagulo Vagbirdo Vagabondo)放浪伯。
帝国各地に、大きくはないが点在する形で飛び地領地を数多く持つ大貴族。
過去の戦争中にあちらこちらで転戦して領地を獲得していった結果らしい。
本来であれば利便性の為にもどこかにまとめる筈だったらしいが、本人の放浪癖とあまりに力を持ち過ぎる事への懸念からあえて分散させている。
当人はいたって能天気で権力に興味はない。
旅の神ヘルバクセーノの加護により、一所に長くとどまることが出来ない代わりに、旅を続ける限り不死である。
・旅の神へルバクセーノ(HerbaKuseno)
人神。初めて大陸を歩き回って制覇した天狗が陞神したとされる。この神を信奉するものは旅の便宜を図られ、よい縁に恵まれるという。その代わり、ひとところにとどまると加護は遠のくという。
・半神
神々の強い祝福を受けたり、人の身で強い信仰を集めたものが、現世にいながら神に近い力を得た生き物。現人神。祝福や信仰が途切れない限り不死であり、地上で奇跡を振るうとされる。
・黄酒
ファシャの醸造酒。紹興酒、老酒など。
スリの子供を捕まえた二人。
お持ち帰り事案である。
「……お持ち帰りですかい?」
「馬鹿言え。子供の教育に悪いことを言うな」
「へえ、すいやせん。しかしまたなんで、ファシャのガキなんて」
宿で少し話をしているうちに、ハキロとムスコロが帰ってきた。挨拶は問題なく終わったようである。問題は紙月たちが連れ帰った子供、シァォチュンと名乗った少女だった。
「うん、スリにあってな」
「姐さんの懐狙おうなんざ」
「まあまあ」
「将来大物になりやすぜ」
「おい」
スリはよくあることとしてしかしムスコロたちが首をかしげたのはその下手人をわざわざ宿に連れ込んだ理由である。何しろ下手人は幼いとはいえ少女であるから、始末として慰み者にしようというのは、あると言えばある。
しかしこの少女を連れてきたのは紙月である。
男であることはわかっているが、子連れであるせいかどうにもその方に今まで鈍かったし、第一人柄としても、子供に乱暴を働こうという人物ではない。そも子連れで子供に乱暴できる人間というものがムスコロたちには理解できない。そこまで落ちぶれていないのだ。
「いやなに、大した被害じゃなかったんだが、かといって何も罰がなしじゃいかんと思ってな」
「はあ」
「だから、晩飯ついでにファシャ街の案内をしてもらうことにした」
「はあ?」
なぜファシャ街なのか、なぜそれが罰になるのか、様々な意図の含まれた「はあ?」であったが、勿論黙殺された。すっかり中華料理を楽しみにしているのであり、そのほかのことなどどうでもいいのである。
シァォチュンを連れた一行は早速ファシャ街へと向かい、この小さな案内人に連れられて異国情緒あふれる町並みを楽しんだ。
シァォチュンは最初こそどんな罰が与えられるのかとおびえていたが、この不思議な一行が本当に案内をさせては純粋に観光を楽しみ、時折店先で甘栗や饅頭を買っては案内役にさえ分けて見せる段になっては、すっかり気が楽になった。ましてや案内賃として少なからず帝国貨幣を渡されては、大いに案内業に励んだ。
もとよりスリなどは金に困って魔が差しただけのことであり、シァォチュンもその家族も純朴な物売りに過ぎない。励んだ分だけ喜んでもらえるとなれば、これに勝ることはない。
シァォチュンは実際、その励みに劣らず立派に案内人を果たした。この娘は人の機微を察することに長けており、子供に対して表情を大きく出して見せる紙月だけでなく、強面であるムスコロや、押しの弱いハキロ、そしてまた鎧で顔の見えないはずの未来の望むものまでをも見事に当てて見せ、一行を大いに楽しませた。最初乗り気でなかったムスコロ達さえも笑顔にさせるのだから、これは天稟、持って生まれた才能と言っていい。
ついに夕食の場を選ぶ段になっても、シァォチュンの案内役ぶりは堂に入っていた。予算を聞き、どのようなものを望むのかを察し、ただ高価で見栄えの良い観光客向けの店ではなく、地元の人間が使う本当に味の良い店へと案内して見せたのである。
店の主も珍しく羽振りのよさそうな客に喜び、特別に個室を用意してくれようとしたが、これは紙月が丁寧に辞した。せっかく良い案内役に恵まれての縁であるから、ここはひとつ今夜の客に一杯ずつ奢らせてほしいというのである。これはムスコロから耳打ちされたことであり、よそ者が手早くなじむ方法であり、また金を持っている時の冒険屋としての正しい流儀であった。
これには客たちも大いに沸き、この見慣れぬ客に乾杯をささげ、またこの上客を招いたシァォチュンを褒め称えた。
気を利かせた店主が次々にふるまった料理は、紙月たちが驚くほどにかつての世界で見知った中華料理そのもの、しいて言えば四川系統に近いようであったが、食材には見慣れないものが多く、その都度にシァォチュンが、わからぬものは他の客たちが親切に教えてくれた。
「こいつは何だい?」
「双頭海老の紅焼だな。甘辛くてうーまいぞ!」
「紅椒肉絲はどうだい? 赤いが甘いんだ」
「こっちの家常豆腐をお食べよ! 表じゃあんまり出してないよ!」
「おお、豆腐か! 豆腐は久しぶりだ! いただくよ!」
「おお、嬢ちゃん帝国の人なのに豆腐を知ってるんだな!」
「久しぶりに湯豆腐食いてえなあ」
「通な食い方知ってるねえ!」
ムスコロたちは初めて見る食べ物に恐る恐るフォークを伸ばし、そして初めての味わいに混乱しながらも、それがうまいのだということを何とか身振りで表現した。
紙月と未来は――未来もさすがに鎧を脱いだ――、貧乏人たちよりよほど上手に箸を使うので、双方から大いに驚かれた。
「姐さん、よくそんな棒っ切れで食えますな」
「お前こそよくそんな刺すことしかできないもんで食えるな」
「そう言われりゃ、そうか」
ムスコロたち帝国人も試しに箸を使ってみたが、これがなかなか難しいもので、ハキロは早々に諦めたが、ムスコロはなんとか肉の端切れをつかむことに成功した。筋肉ダルマのわりに何かと器用な男ではある。
しかし意外なことに、酒にはハキロの方が強く、ムスコロはファシャの酒に早々に酔い始めた。思えば最初にあった時も酔っていたが、あれもかなり少量の酒だったのかもしれない。
「しかしまあ、帝国もうまいものは多いが、ファシャには大いに負けるな」
「なにしろファシャには食の神が降り立ったからな!」
「食の神だって?」
「なんでも、ファシャが西大陸を統一したころに、食の神ジィェンミンが降り立って、今のファシャ料理の基礎を作ったんだそうだ。いまでも食の神は、神々の食卓をめぐっては新たな料理を生み出しているんだそうだ」
神話の話なのか、それとも偉大な料理人の話なのか曖昧な頃の話だそうだが、それでも各地に証拠となるような品々や伝説が残っており、人間から神に陞神したのではないかということであった。
「陞神? おい、ムスコロ」
「んっ、むうう、陞神? 陞神てなあ、あれですよ。人間が偉業を成し遂げるとですな、神々が新たな神として迎え入れるんでやす。そのことを陞神というんですな」
「人が神になるのか」
「神話にゃよくありますし、姐さんが世話んなってる風呂の神だって、ありゃ、世界で最初に温泉につかった山椒魚人が陞神したものですぜ」
「はー」
この世界では神は実在するものとして何となく漠然とその存在を思っていたが、どうも人間から神になったりと結構身近な存在であるらしい。
「ほら、ムスコロさん、水飲んで。陞神といやあ、あれだよ。人間から神になりかけている、半神ってのは今でもいるぞ」
「半神?」
「完全に陞神しちまうと下界に干渉しづらくなるんだが、半神は不死の存在であるが、まだ地上の存在なんだな。帝国でいやあ、放浪伯が有名だな」
「放浪伯、ってぇと、伯爵、貴族なのか?」
「そうさ。帝国のあちこちに飛び地で領地を持ってる。旅の神ヘルバクセーノに愛された結果、旅をしている限り不死身という加護を得たそうだ」
「そりゃまた不便そうな加護だ」
「全くだ」
陞神に、半神。
あるいは半神とやらと会えれば、神々との接点が持てるかもしれない。そうすれば、元の世界に帰る方法がわかるかもしれない。
黄酒に半ば酔いながらそう考える紙月を、未来は仕方がないのだからと眺めるのだった。
用語解説
・シァォチュン(小春)
ファシャ街に住む少女。雑貨屋の娘。魔がさしてスリに手を出すくらいには貧乏だが、根は素直で善人である。
案内人の才能があるようだ。
・双頭海老の紅焼
頭が二つある変わったエビのエビチリ。
・紅椒肉絲
赤パプリカと豚肉の細切り炒め。真っ赤な見た目で、さっぱりとした甘みがある。
・家常豆腐
家常とは家庭風のとか、家でいつも食べる味とか、そのような意味。
家庭風豆腐煮込みと言っていい。実際には豆腐は生揚げとして使用することが多い。
細かい味付けに関しては家それぞれである。
・食の神ジィェンミン
ファシャが西大陸を統一した頃に存在したと言われる料理人。またその陞神した神。
現在の多彩なファシャ料理の基礎を作り上げたと言われる。
一説によれば、美味なる料理を求めた境界の神プルプラが異界より招いたともされる。
・人神
隣人種たちのうち、神に目をかけられたり、その優れた才覚や行跡が信仰を集め、神の高みに至った者たち。武の神や芸術の神、鍛冶の神など幅広い神々がいる。元が人であるだけに祈りに対してよく応えてくれ、神託も心を病ませるようなことはあまりない。人から神になることを陞神という。
・風呂の神マルメドゥーゾ(Mal-Meduzo)
風呂の神、温泉の神、沐浴の神などとして知られる。この世界で最初に湧き出した温泉に入浴し、そこを終の棲家とした山椒魚人が陞神したとされる。この神を信仰する神官は、温泉を掘り当てる勘や、湯を沸かす術、鉱泉を生み出す術などを授かるという。
・山椒魚人(Prao)
最初の人たちとも称される、この世界の最初の住人。海の神を崇め奉り、主に水辺や浅瀬に住まう隣人。肌が湿っていないと呼吸ができないが、水の精霊に愛されており、よほどの乾燥地帯でもなければ普通に移動できる。極めてマイペースで鈍感。好奇心旺盛でいろいろなことに興味を示すが、一方で空気は読めず機微にもうとい。
・放浪伯
ヴァグロ・ヴァグビールド・ヴァガボンド(Vagulo Vagbirdo Vagabondo)放浪伯。
帝国各地に、大きくはないが点在する形で飛び地領地を数多く持つ大貴族。
過去の戦争中にあちらこちらで転戦して領地を獲得していった結果らしい。
本来であれば利便性の為にもどこかにまとめる筈だったらしいが、本人の放浪癖とあまりに力を持ち過ぎる事への懸念からあえて分散させている。
当人はいたって能天気で権力に興味はない。
旅の神ヘルバクセーノの加護により、一所に長くとどまることが出来ない代わりに、旅を続ける限り不死である。
・旅の神へルバクセーノ(HerbaKuseno)
人神。初めて大陸を歩き回って制覇した天狗が陞神したとされる。この神を信奉するものは旅の便宜を図られ、よい縁に恵まれるという。その代わり、ひとところにとどまると加護は遠のくという。
・半神
神々の強い祝福を受けたり、人の身で強い信仰を集めたものが、現世にいながら神に近い力を得た生き物。現人神。祝福や信仰が途切れない限り不死であり、地上で奇跡を振るうとされる。
・黄酒
ファシャの醸造酒。紹興酒、老酒など。