「ただいまー」
「あら、遅かったわね」
空人の家族は父・母・弟のどこにでもありふれたような普通の4人家族。
父はサラリーマン、母はスーパーのパート、弟は小学6年生と何一つ不自由のない幸せな温かい家庭。
温かい家庭だからか分からないが、今まで反抗期というものは訪れなかった。たぶん、これからも反抗期は訪れないだろう。思春期ではあるが。
「空人、今日学校でいいことでもあったの?」
「え、どうして?」
「女の勘ってやつ?」
さすが母親。勘が鋭すぎて少し怖い。
「それで何があったのよ」
「女の子とLINE交換しただけだよ」
「やだ〜。彼女?今度家に連れてきて!」
「彼女じゃないし!気が早いわ!」
そう言い残し急いで階段を駆け上がり自分の部屋に入り込む。

「彼女じゃないし・・・友達だから」
ピコン。無音の部屋に無機質なLINEの通知音が鳴る。携帯の画面を見ると"怜奈"と表示されている。
急いでLINEを開き、メッセージをタップする。

『今日はありがとう。一緒に帰れて楽しかったよ。良かったらまた一緒に帰ってくれると嬉しいな』

嬉しさのあまり制服のままベットにダイブしてしまうがそんなの今は気にならない。3度ほど読み返してから、そっと文字を打ち始める。

『俺も楽しかったからまた帰ろう!それと、学校でもたくさん話そう』

誤字がないか入念にチェックしてから送信ボタンを押す。それからは寝る前まで少しずつ連絡を取り合った。
彼女は小学生の頃からテニスをしているらしく、中学3年生の最後の大会では東北大会まで行ったと聞いた時はびっくりした。
自分は、県大会におしくも行けなかったが市ではなかなか名の知れた選手だった。そのことを話そうと思っていたが、話したところでかっこ悪い自慢みたいになるのでやめた。
その他にも中学校のことや互いの家族のことについてもやり取りし合った。
どうやら早川さんは、父と母と姉2人の5人家族のようだ。長男の自分には姉がいないので、少し羨ましい。

『そろそろ寝るね。また明日学校で!おやすみ』

時刻は23時50分。眠い中LINEしてくれたのだろう。返信しようか迷ったが返信するのは明日の朝にしようと思いやめる。
ここで、『おやすみ』と返信をしてしまったらLINEが終わってしまうかもしれないので既読をつけないまま静かに目を閉じた。