別れた後は少し気まずいが学校には行かないといけない。"行きたくないな”と心で思う。
昨日は家に帰ると母に驚かれた。それもそのはず、目は真っ赤で少し腫れていたようだ。あまりにも元気がない空人に母は何も声をかけることもなく普段通り振る舞っていたが、本当は何があったか聞きたかったはず。
でも、それが嬉しかった。ここで母に話したら後悔で押しつぶされていただろう。夕食や入浴を済ませてからはずっとベットの上で考え続けた。だが、答えは出ないまま寝落ちしていたらしく目を覚ますとカーテンの隙間から眩しい光が差し込んでいた。
昨日のことを思い出しながら少しずつ教室に向かう。教室に入りそっと自分の席に腰を下ろし持ち物を机の中にしまう。
どうやら怜奈はまだ来ていないらしい。
「みんな、おはよう!」
後ろから聞こえてくる声に振り向いてしまう。
「ちょっと怜奈、目どうしたの!腫れてるよ!」
彼女もまたあの後泣いていたのだろう。
「それがさ、昨日観た映画がもう切なすぎて号泣しちゃったよー」
彼女なりの痩せ我慢のつもりみたいだが、顔は笑ってはいなかった。
彼女もこちらに気付き目が合う。目の前に怜奈がいるのに口が開かない。まるで大きな壁で遮られているかのような感覚。
彼女も見た感じ同じ様子のようだ。気まずくなったようで目を逸らされ、彼女は友達の元へ行ってしまった。
これが『別れる』ということか。付き合っている時は誰よりも近いところにいる君。でも、別れてしまうとこんなにも遠い存在に変わってしまう。
「おい、どうした。そんな辛気臭い顔をして」
優が顔を覗き込んでくる。
「もしかして、空人別れた?」
なんで、こんなに鋭いのだろうか。
「あぁ、まぁそんな感じ」
「だろうな。顔に『別れました』って書いてあるような表情だぞ」
"一体どんな表情だよ"と思いつつ朝鏡で見た顔を思い出す。あぁ確かに。
「振られたからそんなに落ち込んでるのか?」
やはり振られたと思われるくらいの表情なのだろう。
「いや、俺から振ったんだ」
「はぁー?ならなんでそんな後悔してるような顔してるんだよ」
当然の反応だ。学年でもトップレベルで可愛く、運動神経抜群。そんな人を振るなんて他の男子からするとありえない話に違いない。正気かすら疑われるかもしれない。
「自信がなかったんだよ。俺があの子の隣にこれからも居ていいのか・・・情けないよな俺。まだ好きだし、当分の間未練たらたらだと思う。どうしても付き合っていくってなると不安で覚悟できなかった。周りの声にも耐えられなかった」
優は何も言わず黙って聞いていた。
「そうか。空人がそんなこと考えていたなんて微塵も思わなかったわ。周りが揶揄っていたのも空人からしたらプレッシャーだったんだよな。気付いてやれなくて悪かった。今すぐ気持ちを忘れろとは言わないから、少しずつでいいから前に進もうぜ。俺は空人の隣から離れることはないからよ!」
涙がでかけるがなんとか堪える。優がいいやつなのは知っていたが、こんなに頼れる男とは...良い友達を持ったとつくづく実感する。
「ありがとう優。バカにされるかと心配してた自分が恥ずかしい」
「俺がそんなことするわけないだろ。高校の友は一生の友って言うだろ?俺は空人といつかそうなれる日が来ると思ってるから、これからはもっと頼れよな。もし、俺が何かで苦しんでたらその時は助けてくれよ!」
「当たり前だろ!」
2人で笑い合う。教室にいるみんなは不思議そうにしていたけれど、今は全く気にならなかった。優に出会えて本当に良かった。
優がそばにいてくれるのは心の救いになったけれど、怜奈への気持ちが完全になくなった訳ではない。
同じクラスなのでクラスメイトたちも2人が他人のような関係になっていることに気付いただろう。でも、誰1人として『別れたの?』と聞いてくる人はいなかった。付き合った時はあんなにも聞いてきたのに別れた雰囲気になると気を遣い始める。
今回ばかりは、『別れたの?』と尋ねられた方が少し楽だったかもしれない。優以外にも自分の情けない話を聞いてもらってバカにされたり、笑われたりしたかった。それほどまで空人の心は憔悴しきっていた。
昨日は家に帰ると母に驚かれた。それもそのはず、目は真っ赤で少し腫れていたようだ。あまりにも元気がない空人に母は何も声をかけることもなく普段通り振る舞っていたが、本当は何があったか聞きたかったはず。
でも、それが嬉しかった。ここで母に話したら後悔で押しつぶされていただろう。夕食や入浴を済ませてからはずっとベットの上で考え続けた。だが、答えは出ないまま寝落ちしていたらしく目を覚ますとカーテンの隙間から眩しい光が差し込んでいた。
昨日のことを思い出しながら少しずつ教室に向かう。教室に入りそっと自分の席に腰を下ろし持ち物を机の中にしまう。
どうやら怜奈はまだ来ていないらしい。
「みんな、おはよう!」
後ろから聞こえてくる声に振り向いてしまう。
「ちょっと怜奈、目どうしたの!腫れてるよ!」
彼女もまたあの後泣いていたのだろう。
「それがさ、昨日観た映画がもう切なすぎて号泣しちゃったよー」
彼女なりの痩せ我慢のつもりみたいだが、顔は笑ってはいなかった。
彼女もこちらに気付き目が合う。目の前に怜奈がいるのに口が開かない。まるで大きな壁で遮られているかのような感覚。
彼女も見た感じ同じ様子のようだ。気まずくなったようで目を逸らされ、彼女は友達の元へ行ってしまった。
これが『別れる』ということか。付き合っている時は誰よりも近いところにいる君。でも、別れてしまうとこんなにも遠い存在に変わってしまう。
「おい、どうした。そんな辛気臭い顔をして」
優が顔を覗き込んでくる。
「もしかして、空人別れた?」
なんで、こんなに鋭いのだろうか。
「あぁ、まぁそんな感じ」
「だろうな。顔に『別れました』って書いてあるような表情だぞ」
"一体どんな表情だよ"と思いつつ朝鏡で見た顔を思い出す。あぁ確かに。
「振られたからそんなに落ち込んでるのか?」
やはり振られたと思われるくらいの表情なのだろう。
「いや、俺から振ったんだ」
「はぁー?ならなんでそんな後悔してるような顔してるんだよ」
当然の反応だ。学年でもトップレベルで可愛く、運動神経抜群。そんな人を振るなんて他の男子からするとありえない話に違いない。正気かすら疑われるかもしれない。
「自信がなかったんだよ。俺があの子の隣にこれからも居ていいのか・・・情けないよな俺。まだ好きだし、当分の間未練たらたらだと思う。どうしても付き合っていくってなると不安で覚悟できなかった。周りの声にも耐えられなかった」
優は何も言わず黙って聞いていた。
「そうか。空人がそんなこと考えていたなんて微塵も思わなかったわ。周りが揶揄っていたのも空人からしたらプレッシャーだったんだよな。気付いてやれなくて悪かった。今すぐ気持ちを忘れろとは言わないから、少しずつでいいから前に進もうぜ。俺は空人の隣から離れることはないからよ!」
涙がでかけるがなんとか堪える。優がいいやつなのは知っていたが、こんなに頼れる男とは...良い友達を持ったとつくづく実感する。
「ありがとう優。バカにされるかと心配してた自分が恥ずかしい」
「俺がそんなことするわけないだろ。高校の友は一生の友って言うだろ?俺は空人といつかそうなれる日が来ると思ってるから、これからはもっと頼れよな。もし、俺が何かで苦しんでたらその時は助けてくれよ!」
「当たり前だろ!」
2人で笑い合う。教室にいるみんなは不思議そうにしていたけれど、今は全く気にならなかった。優に出会えて本当に良かった。
優がそばにいてくれるのは心の救いになったけれど、怜奈への気持ちが完全になくなった訳ではない。
同じクラスなのでクラスメイトたちも2人が他人のような関係になっていることに気付いただろう。でも、誰1人として『別れたの?』と聞いてくる人はいなかった。付き合った時はあんなにも聞いてきたのに別れた雰囲気になると気を遣い始める。
今回ばかりは、『別れたの?』と尋ねられた方が少し楽だったかもしれない。優以外にも自分の情けない話を聞いてもらってバカにされたり、笑われたりしたかった。それほどまで空人の心は憔悴しきっていた。