お互い「なんでもいい」「どこでもいい」派だったから、とりあえず「遊ぶ」で思いつく場所を交互に挙げていった。知り合いに見られたら大変だと時生が言うので、わざわざ電車でふたつ隣の市まで足を運んだ。

 まずはゲーセンに行った。

 お互い特にやりたいものがなかったから、とりあえず端から順に攻めていくことにした。

 UFOキャッチャーをした。レースゲームをした。エアホッケーをした。コインゲームをした。クイズバトルをした。オンラインの麻雀ゲームを(ルールなんて全く知らなかったから秒殺だったけど)した。

 時生はゲーム全般だめだった。私も得意じゃないのだけど、それでもほとんど余裕で勝った。

 次はカラオケに行った。

 流行りの曲を歌った。懐メロも歌った。お母さんくらいの世代の、ちょっと古い曲も歌った。アニソンも歌った。得手不得手なんか関係なく、思いつく限りの曲を交互に入れていった。

 時生は歌が下手だった。たぶん私よりも下手だった。音痴ではないのだけど、歌い方がわからないという感じだった。ただ、ものすごく真剣に全力で歌っていることだけはひしひしと伝わった。

 遊園地に行った。

 お互い特に乗りたいものがなかったから、またまた端から順に攻めていくことにした。

 名前がよくわからないぐるぐるマシンに乗った。お化け屋敷に入った。迷路に入った。回転しないジェットコースターに乗った(この辺から時生の様子がおかしかった)。回転するジェットコースターにも乗った。コーヒーカップはそれとなく無視して、バイキングに乗った。

 ら、時生が顔面蒼白でご臨終した。時生は絶叫マシンが苦手だった。

 しばらくベンチで休み、いつの間にか閉園時間が迫っていた。

 ラストは観覧車、とはいかなかった。時生は高所恐怖症らしかった。

 代わりにゴーカートで締めた。運転役は私が担った。

 今日一日のことをまとめると、時生は自分から誘ってきたくせに〝外で思いっきりはしゃぐ〟こと全般が苦手だったのだ。

 言葉にして並べてみれば、すごくつまらなそうに思える。

 だけど楽しかった。

 ゲームが下手な時生を見て笑って、下手だけど一生懸命な歌を聴いて笑って、乗り物酔いして「吐きそう」と言っている時生を見て大笑いした。

 ふたりとも制服だし時生は防寒してるし、受付をする度に不審な目を向けられる上に遊んでいる最中は周囲の人たちにじろじろ見られてしまったけれど、そんなことも気にならないほどものすごく楽しかった。

 なにがそんなに楽しかったのか、自分でもよくわからない。だけど笑っているときは、学校のことも家のことも忘れられた。ときたま思い出すこともあったのだけど、それでもいつもよりはずっと忘れられた。

 遊んでいる最中、スマホの存在は全くと言っていいほど気にならなかった。

 だから、SNSもLINEも一切見なかった。