「………」
「………」
家に入ってすぐ目に入った咲桜を見て、黙り込んだ。
年頃の娘が玄関で土下座していた。何があった。
「咲桜? どうした……?」
「お願いがあります」
やたら凛とした声に、自分も膝を折る。
「なんだ?」
「流夜くんのお誕生日をお祝いしたので、三十一日の夜、流夜くんのところにいることを許してください」
「―――」
あ、と声に出さずに気づいた。流夜くんの誕生日。そういえば八月一日だったか。
では、前の日から一緒にいたいと、そういうことか? でもそれは――
「……流夜くんも、同意しているのか?」