「笑満」

一限が終わって、すぐに笑満に寄った。

「なにあった?」

声をかけると、笑満の肩が震えた。

そしてのろのろと顔をあげる。唇を真一文字に結んで、私を見上げて来た。

「は……おとくん、怒らせたかも……しれない………」

「―――頼」

「うー?」

頼がむくりと机から顔をあげた。

「遙音先輩んとこ行くよ。写真許可する」

「わーい。笑満―、オトをシメるのは任せろ」

「ちょ――」 

頼も立ち上がったのを笑満が止めようとしたそのとき、勢いよくドアが開いた。

「邪魔する」

聞こえた声に、はっと顔を向ける笑満。

「は――」

遙音先輩、だった。険しい顔で、一直線に笑満のことを見て来た。

「笑満ちゃん、ごめん」

「えっ? わあ!」

言うなり、笑満を抱き上げた。

一気にざわめく教室内。「な、夏島先輩⁉」「笑満いいなー!」「カッコいいー!」

「一緒に来て」

姫抱きに抱えあげられて、笑満は目を白黒させた。先輩はいかめしい顔の私に瞳を遣る。

睨みあったのは一瞬だった。

「咲桜、頼。笑満ちゃんもらうから」

「どーぞ」

「笑満、首に手ぇくらい廻せ」

即座に答えた私と、頼からいらん助言を受けて、笑満の顔が真っ赤になった。

「あの――」

「じゃ、失礼」

そのまま先輩が笑満を連れていってしまった。

ひゅん。