「どうした、急に」
流夜くんを見られないけど、服の裾を握りこんだ。
「その……無駄に背丈あるから……もっと小さかったら可愛い行動とかも合うだろうし、こんなふうにしてもらっても、こう、ちょこんと感? 女の子らしいって言うか……だ、抱き上げるときも、そう重くないだろうし……」
流夜くんはやすやすと抱え上げてくれるけど、自分は背丈の分の体重もある。重かったらどうしよう……。
「……そんなこと考えてんのか?」
「無駄に大きいのはそういうこと考えるんだよ」
背が高くていいのは、高いところの物を取るときくらい。
「このままで十分可愛いのに?」
するりと流夜くんの手が私の髪を絡めとった。そんなことを言われたらドキドキしてしまうじゃないか。
「……もっとやせた方がいいとか思わない?」
「それは駄目だ。今で、こうしたときちょうどいいんだから」
背中に腕を廻されて強く抱き寄せられた。
「俺も背丈ある方だから、背が高いと、咲桜の顔がよく見えるから嬉しいんだけど」
「……そうですか?」
な、なんと嬉しい解釈。声が照れる。
「俺も無駄にでかいからなー。いいんじゃないか? 似た者同士で」
「流夜くんはカッコいいからいいんだよ!」
がばっと顔をあげると、面喰った様子の流夜くんと視線がかちあった。うあ……。
「これ堂々巡りのフラグだよな」
「そ、だね……」
「お互いさまってことでいいか」
「……はい」
今一時訪れる恋人の時間。
在義父さんが帰ってくるまでの、これは秘密。
交わされた視線がそう囁いた。