「約束のしるし、目に見えるものでつけてもいいか?」
「え? うん?」
意図がわからずいると、流夜は楽しそうにテーブルの下から小さな袋を取り出した。
「藤城だったら、学内でつけてても大丈夫だから……出来るだけ、つけていてほしい」
「―――」
言って、流夜が取り出したのは――
「ゆび、わ……」
「うん。咲桜の誕生日は……教師の役得で知ってたから、今日渡すつもりで準備してた。こういう束縛が嫌じゃなかったら、つけていてくれないか?」
流夜くんの片手の平の中の、小さな箱。そこには細身のシンプルなラインの指輪。中央に石が載っている。きらきらしている……。
「見ても、いい?」
「どうぞ。咲桜のだよ」
流夜くんの手から、ボックスから外された指輪が渡される。両手で包むように眺めると、それを流夜くんが嬉しそうに見ている。
「――えっ、でも前にこれもらったばかりだよ?」
と、首元にはネックレスが煌めいている。
「まあそうなんだけど、これは……魔除け」
「魔除け⁉ どこかに梵字でも彫ってあるの⁉」
これって神具⁉ 違う違う、と流夜くんは苦笑した。正しくはムシ除けかもしれない、と呟きつつ、私の掌から指輪を取る。
「結婚を、咲桜に申し込んだ証拠、かな」
「………」
それって、いわゆる……
「婚約……?」
「指輪、かな」
流夜くんが悪戯気に笑う。婚約指輪。またカーッと頬が熱くなった。ええと、ええと……。
「……はめて、くれますか?」