城下の街を出て林の間に造られた石畳の外交路を通る、
父上からの激励を噛みしめ魔人たちが出現したという人の国と動物たちの森林の境目、
『魔人の境界』へと向かう。この日のためにかなりの勉強をしてきた、魔人についてだけじゃない、
他のこの国以外の地域について、剣術、足の運び方、挙げればきりがない。
この勇者パーティーには5人の選ばれた貴族がいる。
自分を含め、兄上、一級貴族ロベリア家長女ロベリア・シレネ、
大豪商ダリア家次男ダリア・アイビー、
二級貴族カルミア家長男…、
などなどこの国の重役たちの子供ばかり、
別にまだ覚えなくてもいいものの無駄に勉強してしまった。そして……。
昨日の奴隷兵、ニゲラ、さらにもう一人白いフードを被った男がいる。
…確かこいつは昨日の処刑場に少女といた男だ。
「いやー、カモミール家の兄弟と討伐に行けるなんて夢見たいです」
ダリア・アイビーが口を開く、いかにもお調子者という喋り方だ。
「本当にありがたいことですわ」
「よしてくれ、同じ貴族なんだから」
ロベリア・シレネも兄上のことを上目遣いでチラチラ見ている、
なるほどこの女の狙いは兄上か、このパーティーに入ってすぐに分かった、
このチームはうちの兄上にどれだけ気に入られるかを争っていると、もしかして、魔人討伐も…。
辺りに少しづつ霧が出てくる。
「おい、魔人の境界にはまだ着かねーのか奴隷共」
カルミア家の長男が声を荒げて奴隷兵2人を急かせる。
「いえ…というかもうすでに」
「着いてます」
「「はっ!」」
20メートルほどの高さだろうか、
霧と森で重なって見えずらくなっているが確かにそこにある。
「おい、なんで早く言わなかった」
「お話をされていたので、奴隷の身分の私が話を遮るのも…」
猪のような勢いでカルミアはニゲラに近づくとその勢いのまま大きく回し蹴りをした。
「ちょ……」
数メートルほど吹き飛ぶが、着地の瞬間に軽く受け身をとる。
「奴隷が、オレに口答えするんじゃねー」
「……申し訳ございません」
しばらくの沈黙が横切る、俺も何も言えない、こんなのが勇者…。
「まあまあ、はい、この件はもう終わり、グラジオラスも許してやってくれ」
「……はい」
「さあ、いつも通り魔人を探してくれ、見つけたら呼んで」
「承知致しました」
ニゲラたち2人は境界に沿いながら森の方へ歩き出す。
「さっ、俺たちは談笑でもしておこう」
「流石カモミールさん」
「…………」
なにかが、違う、それは自分の中の大事なものも疎かにするようなそんな……。
「クローバー、お前もこっちに来い」
「はい……」
何気なく、何となく思い出してしまうのはニゲラの姿、あの木刀を握った。
「すみません兄上、実は言いにくいのですが…」
「…………?」
「先ほどからトイレに行きたくて…」
はっ…と、ため息をつき、こちらを憐れむように見つめる。
「ここからできるだけ遠くでしてこい」
「すみません」
速足で、兄上の姿が見えなくなるとさらに速度を上げて走り出した。
魔人の境界を沿って歩いているうちにどんどん肌がひりひりしていく、
とても気味が悪い、………あっ。
「ニゲラさん!」
「クローバー様、なぜ…」
辺りを見回している2人を発見する、2人とも白い恰好をしているので見つけやすかった。
「…その子は?」
「あぁ昨日偶然知り合ってな、悪い奴ではない」
白いフードを被った男に俺の説明をしてくれている。
「…つまり、この間の討伐には関係ないと」
「そうだ」
話は聞こえてくるが何を言っているのか分からない、
そうしているうちに段々と肌の違和感が強くなっていく。
「俺も協力させて下さい、魔人見つけるの」
「……すまないが戻っていてくれないか」
想定外の答えが返ってきた、すぐによろしく頼むと返されると思ったのに。
「この仕事は君たち勇者には難しい」
何を言っているのか全く分からない、
それでは何のために俺たちが来ているのか、勇者には難しいって……。
「まさか、この子知らないのか、このパーティーの仕組みを…」
「えっ、仕組み…」
ニゲラたちが一斉に抜刀をする、先ほどまで感じていた肌の違和感が痛みに変わる。
「なに、この痛み…」
「くそっ…魔力だ」
霧の色が赤黒くなる、鈍い地響き、一部の森のざわめきが共鳴するかのように辺りに広がっていく。
「来た、奴らだ…、ブルースターっ勇者たちを呼んできてくれ」
「了解した」
赤い霧の中に黄色く光った目がある、少しずつ、
すこしずつ体の部分が浮き彫りになっていく。
「クローバー様!早く逃げてください」
「……、黒い…」
「クローバー!」
足が動かない、それよりも、真っ黒く靄のかかった人型、いや、人型に近い生物。
「あれが…」
ニゲラが俺を抱え込み霧の端まで逃げる。
「やばいよあれ、勇者が来るまで逃げよう」
「いや逆だ」
俺を地面におろし、剣を構える。
「俺たちの仕事は勇者が来るまでに魔人を討伐することだ」
父上からの激励を噛みしめ魔人たちが出現したという人の国と動物たちの森林の境目、
『魔人の境界』へと向かう。この日のためにかなりの勉強をしてきた、魔人についてだけじゃない、
他のこの国以外の地域について、剣術、足の運び方、挙げればきりがない。
この勇者パーティーには5人の選ばれた貴族がいる。
自分を含め、兄上、一級貴族ロベリア家長女ロベリア・シレネ、
大豪商ダリア家次男ダリア・アイビー、
二級貴族カルミア家長男…、
などなどこの国の重役たちの子供ばかり、
別にまだ覚えなくてもいいものの無駄に勉強してしまった。そして……。
昨日の奴隷兵、ニゲラ、さらにもう一人白いフードを被った男がいる。
…確かこいつは昨日の処刑場に少女といた男だ。
「いやー、カモミール家の兄弟と討伐に行けるなんて夢見たいです」
ダリア・アイビーが口を開く、いかにもお調子者という喋り方だ。
「本当にありがたいことですわ」
「よしてくれ、同じ貴族なんだから」
ロベリア・シレネも兄上のことを上目遣いでチラチラ見ている、
なるほどこの女の狙いは兄上か、このパーティーに入ってすぐに分かった、
このチームはうちの兄上にどれだけ気に入られるかを争っていると、もしかして、魔人討伐も…。
辺りに少しづつ霧が出てくる。
「おい、魔人の境界にはまだ着かねーのか奴隷共」
カルミア家の長男が声を荒げて奴隷兵2人を急かせる。
「いえ…というかもうすでに」
「着いてます」
「「はっ!」」
20メートルほどの高さだろうか、
霧と森で重なって見えずらくなっているが確かにそこにある。
「おい、なんで早く言わなかった」
「お話をされていたので、奴隷の身分の私が話を遮るのも…」
猪のような勢いでカルミアはニゲラに近づくとその勢いのまま大きく回し蹴りをした。
「ちょ……」
数メートルほど吹き飛ぶが、着地の瞬間に軽く受け身をとる。
「奴隷が、オレに口答えするんじゃねー」
「……申し訳ございません」
しばらくの沈黙が横切る、俺も何も言えない、こんなのが勇者…。
「まあまあ、はい、この件はもう終わり、グラジオラスも許してやってくれ」
「……はい」
「さあ、いつも通り魔人を探してくれ、見つけたら呼んで」
「承知致しました」
ニゲラたち2人は境界に沿いながら森の方へ歩き出す。
「さっ、俺たちは談笑でもしておこう」
「流石カモミールさん」
「…………」
なにかが、違う、それは自分の中の大事なものも疎かにするようなそんな……。
「クローバー、お前もこっちに来い」
「はい……」
何気なく、何となく思い出してしまうのはニゲラの姿、あの木刀を握った。
「すみません兄上、実は言いにくいのですが…」
「…………?」
「先ほどからトイレに行きたくて…」
はっ…と、ため息をつき、こちらを憐れむように見つめる。
「ここからできるだけ遠くでしてこい」
「すみません」
速足で、兄上の姿が見えなくなるとさらに速度を上げて走り出した。
魔人の境界を沿って歩いているうちにどんどん肌がひりひりしていく、
とても気味が悪い、………あっ。
「ニゲラさん!」
「クローバー様、なぜ…」
辺りを見回している2人を発見する、2人とも白い恰好をしているので見つけやすかった。
「…その子は?」
「あぁ昨日偶然知り合ってな、悪い奴ではない」
白いフードを被った男に俺の説明をしてくれている。
「…つまり、この間の討伐には関係ないと」
「そうだ」
話は聞こえてくるが何を言っているのか分からない、
そうしているうちに段々と肌の違和感が強くなっていく。
「俺も協力させて下さい、魔人見つけるの」
「……すまないが戻っていてくれないか」
想定外の答えが返ってきた、すぐによろしく頼むと返されると思ったのに。
「この仕事は君たち勇者には難しい」
何を言っているのか全く分からない、
それでは何のために俺たちが来ているのか、勇者には難しいって……。
「まさか、この子知らないのか、このパーティーの仕組みを…」
「えっ、仕組み…」
ニゲラたちが一斉に抜刀をする、先ほどまで感じていた肌の違和感が痛みに変わる。
「なに、この痛み…」
「くそっ…魔力だ」
霧の色が赤黒くなる、鈍い地響き、一部の森のざわめきが共鳴するかのように辺りに広がっていく。
「来た、奴らだ…、ブルースターっ勇者たちを呼んできてくれ」
「了解した」
赤い霧の中に黄色く光った目がある、少しずつ、
すこしずつ体の部分が浮き彫りになっていく。
「クローバー様!早く逃げてください」
「……、黒い…」
「クローバー!」
足が動かない、それよりも、真っ黒く靄のかかった人型、いや、人型に近い生物。
「あれが…」
ニゲラが俺を抱え込み霧の端まで逃げる。
「やばいよあれ、勇者が来るまで逃げよう」
「いや逆だ」
俺を地面におろし、剣を構える。
「俺たちの仕事は勇者が来るまでに魔人を討伐することだ」