彼が当時私に話してくれたことは、今でもほとんど消えないまま残っている。

例えば、小さいころからパン屋さんになりたかった話。

今ではきっと変わっているのかもしれない。

そんなこと私が知るはずない。

でも、楽しそうに夢を語る彼は、本当に輝いて見えた。

あとはやっぱり、弟さんの話かな。

彼も小さかった頃に、亡くなってしまったらしい。

いつも笑顔の彼も、その時だけはその笑顔が仮面のようにさえ見えた。

書写の授業の時、どっちがうまいか勝負したこともあったよね。

川村は覚えてないと思うけど、楽しかった。

お互いに時間をかけすぎて先生に注意されたのだって、嫌じゃなかった。

川村としたこと全部、私の大切な思い出なんだ。

一緒に夕焼け見たせいで、今でも夕焼け見るたびに思い出すんだ。

バカでしょ?

自分でもわかってるよ。