「え?」

当時の彼のことしか頭にない私にとって、それは何よりもうれしいものだった。

「これ、本人情報だから」

そう言ってにやりと笑うと、佐々木は去っていった。

その後の授業の内容なんてきっと頭に入ってはいない。

ただただ、幸せだった。

でも、その時の私はおろかだった。

なんで彼に気持ちを伝えなかったんだろう?

何を恥ずかしがっていたんだろう?

この時に勇気を出していれば、後から泣くことにはならなかったのに。