今日は待ちに待った10月16日。結局、誕生日プレゼントは地層ケーキ、アイシングクッキー、ネックレス、スカーフにした。
スカーフはインターネットで、可愛くて夜先生に似合いそうなのを彩空と選んだ。むろん、気を使わせないよう安すぎず、高すぎないものを。
ネックレスと私たちのキーホルダーはもちろん手作りだ。1つ1つ独立していても可愛いということを意識した。そして、3つで宇宙の絵柄が完成する。自分たちで言うのもなんだが、とても可愛いと思う。
「詩月、おはよう。」
「おはよう、彩空、彗。」
今日は16時に学校に集合だ。それまでに最終的な仕上げ、ケーキとクッキーを作らなければならない。ゆえに、私の家に10時に集合だ。まぁ、彗がお菓子作りの戦力になるとは思わないが。
「とりあえず、昨日のうちにスポンジだけ焼いておいたよ。午前中はクッキーを焼いて、午後はケーキとクッキーの仕上げといきますか。」
「彗、分量測るくらいならできるよね?」
「おい、バカにしてんのか?それぐらいできるわ。」
「じゃ、薄力粉とかレシピ通りに測って。」
私たちは黙々とクッキー生地を作っていく。
「詩月、全部丸い形でいいの?」
「え、土星って輪っかついてなかったっけ?」
「2人とも、土星だけじゃなくて天王星にも輪っかついてるよ。だから、9個のうち2つは輪っかつき、7つはただの丸だよ。」
やっぱり彗がいてよかった。って、のんびり作ってたらもう12時ではないか。
「ねぇちょっとだけお昼ご飯食べない?焼きそばだったらすぐに作れるけど。クッキー焼いている間にお昼食べて、急いで、最後の仕上げにかかろ。」
「焼きそばおいしかったね。やば、あと3時間ちょっとしかないじゃん。クッキーうまく焼けた?」
「うん。いい感じ。」
「じゃあ、彩空と彗で絵を描いちゃって。私は、スポンジの仕上げするから。全部終わったら3人でケーキの飾り付けしよ。」
ケーキのスポンジには少し自信がある。ココアの分量を変えることで、色に差をつけた。なるべく生クリームを薄く塗り、所々にイチゴを入れることでマグマだまりまで再現する。部分的に生クリームを厚くすることで凝灰岩を再現し、下の層にチョコチップを入れることで化石を表現する。我ながら、天才的なアイディアだ。
「できた。」
アイシングクッキーが出来上がったようだ。おぉー。なかなかに上手だ。では、ケーキの最終的な飾り付けに移ろう。
「彗は、チョコのネームプレート作って。”夜先生お誕生日おめでとう”ってお願い。彩空は、一緒にケーキの上に海と草原と火山を作って。」
失敗はできない。慎重に慎重に飾り付けをしていく。
…できた。時間はもう15時45分。問題はこのケーキをどうやって崩さずに持っていくかだ。
「ただいまー。」
この声は、お母さんだ。よし、送っていってもらおう。
「彩空と彗は、自転車で学校に行って。私はプレゼント全部持って車で行く。じゃあ、とりあえず駐輪場集合で。」
プレゼントをバレないようにリュックに隠し急いで地学室に向かう。セーフ。先生はまだ職員室のようだ。一応彗に廊下を見張ってもらい、私と彩空で地学室を簡単に飾り付ける。
「じゃぁ、先生が来たらHappy Birthday to You を歌おう。」
教卓にスカーフとネックレスを置く。よし、これで準備は完了だ。
「夜先生きたよ。」
「「「ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデーディーア夜先生、ハッピーバースデートゥーユー。お誕生日おめでとうございます。」」」
夜先生はドアに手をかけたまま止まってしまっている。
「…ありがとう。っえ、プレゼントまで。ほんとにありがとう。」
夜先生はとても喜んでくれた。
「え、もしかしてこのネックレス手作り?」
「「そうです。」」
先生は私たちが作ったネックレスを早速つけてくれた。やっぱりとても似合っている。
「実はそれ、ただのネックレスじゃないんです。」
私と彩空は鞄から自分たちのキーホルダーを取り出す。
「ネックレスだけでも可愛いんですけど、私たちのキーホルダー2つと先生のネックレス、この3つをくっつけることで絵柄が完成するんです。ペアキーホルダー・ネックレス。みたいな。」
先生は驚いた顔をする。
「女子3人、お揃いだね。」
ここで、さらに先生を驚かせるケーキとクッキーの登場だ。
「え、ケーキとクッキーもあるの?しかも手作り?やばい泣きそうだよ。え、太陽系じゃん。ケーキは、大地?美味しそう。」
ケーキは切ってからのお楽しみだ。
「あ、包丁ないから切れないじゃん。ケーキ大きく作っちゃったし、職員室の先生でも誘って家庭科室で食べるか。」
きっと、お家でも家族とケーキを食べるだろう。たくさん食べてもらいたいが、お腹いっぱいになられても困る。複雑だ。
職員室にたまたまいた赤石先生とラッキーな3人の先生を誘って、家庭科室でケーキを食べる。
「じゃ、切るね。」
「あ、待って。写真撮りたい。」
私たちが作ったお世辞にも綺麗とはいえないケーキの写真を撮ってくださるんですか。先生は神ですか?でも、驚くのはこれからですよ。
「えー、中が地層になってる。ちゃんと色が違うし、マグマだまりもある。これは凝灰岩の層?下の層だけチョコチップあるし。もしかして、化石?完成度高すぎでしょ。」
あはは。そう、自分で言うのもなんだけど完成度が高いんです。先生は、断面の写真も撮っていた。嬉しい。頑張った甲斐があった。そして、先生はケーキを食べる。
「んーん。ウンメ。」
久しぶりに鹿児島の方言を聞いた。先生が方言で美味しいと言う時は、心から本当に美味しいと思っている時だ。たがら、お世辞ではない。それが、私たちをもっと幸せにする。その姿を見て、私たち3人も食べ始める。うん。かなり美味しい。スポンジも失敗しておらず、甘すぎない。美味しすぎて、8人ともすぐに食べ終わってしまった。
「あはは。彗、口の周りに生クリーム付いてるよ。」
夜先生に指摘されて、彗は顔が真っ赤だ。それを見て私たちはさらに笑う。楽しいな。この時間が永遠と続けばいいのに。夜先生と心から笑い合う時間。夜先生の楽しそうな顔が、私の心を満たしていく。
「そーいえば、スーパームーン見るんじゃなかったの?」
あ、やべ。忘れてた。もう17時を過ぎている。私たちは急いで家庭科室と地学室を片付けて、望遠鏡の準備をする。
スカーフはインターネットで、可愛くて夜先生に似合いそうなのを彩空と選んだ。むろん、気を使わせないよう安すぎず、高すぎないものを。
ネックレスと私たちのキーホルダーはもちろん手作りだ。1つ1つ独立していても可愛いということを意識した。そして、3つで宇宙の絵柄が完成する。自分たちで言うのもなんだが、とても可愛いと思う。
「詩月、おはよう。」
「おはよう、彩空、彗。」
今日は16時に学校に集合だ。それまでに最終的な仕上げ、ケーキとクッキーを作らなければならない。ゆえに、私の家に10時に集合だ。まぁ、彗がお菓子作りの戦力になるとは思わないが。
「とりあえず、昨日のうちにスポンジだけ焼いておいたよ。午前中はクッキーを焼いて、午後はケーキとクッキーの仕上げといきますか。」
「彗、分量測るくらいならできるよね?」
「おい、バカにしてんのか?それぐらいできるわ。」
「じゃ、薄力粉とかレシピ通りに測って。」
私たちは黙々とクッキー生地を作っていく。
「詩月、全部丸い形でいいの?」
「え、土星って輪っかついてなかったっけ?」
「2人とも、土星だけじゃなくて天王星にも輪っかついてるよ。だから、9個のうち2つは輪っかつき、7つはただの丸だよ。」
やっぱり彗がいてよかった。って、のんびり作ってたらもう12時ではないか。
「ねぇちょっとだけお昼ご飯食べない?焼きそばだったらすぐに作れるけど。クッキー焼いている間にお昼食べて、急いで、最後の仕上げにかかろ。」
「焼きそばおいしかったね。やば、あと3時間ちょっとしかないじゃん。クッキーうまく焼けた?」
「うん。いい感じ。」
「じゃあ、彩空と彗で絵を描いちゃって。私は、スポンジの仕上げするから。全部終わったら3人でケーキの飾り付けしよ。」
ケーキのスポンジには少し自信がある。ココアの分量を変えることで、色に差をつけた。なるべく生クリームを薄く塗り、所々にイチゴを入れることでマグマだまりまで再現する。部分的に生クリームを厚くすることで凝灰岩を再現し、下の層にチョコチップを入れることで化石を表現する。我ながら、天才的なアイディアだ。
「できた。」
アイシングクッキーが出来上がったようだ。おぉー。なかなかに上手だ。では、ケーキの最終的な飾り付けに移ろう。
「彗は、チョコのネームプレート作って。”夜先生お誕生日おめでとう”ってお願い。彩空は、一緒にケーキの上に海と草原と火山を作って。」
失敗はできない。慎重に慎重に飾り付けをしていく。
…できた。時間はもう15時45分。問題はこのケーキをどうやって崩さずに持っていくかだ。
「ただいまー。」
この声は、お母さんだ。よし、送っていってもらおう。
「彩空と彗は、自転車で学校に行って。私はプレゼント全部持って車で行く。じゃあ、とりあえず駐輪場集合で。」
プレゼントをバレないようにリュックに隠し急いで地学室に向かう。セーフ。先生はまだ職員室のようだ。一応彗に廊下を見張ってもらい、私と彩空で地学室を簡単に飾り付ける。
「じゃぁ、先生が来たらHappy Birthday to You を歌おう。」
教卓にスカーフとネックレスを置く。よし、これで準備は完了だ。
「夜先生きたよ。」
「「「ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデーディーア夜先生、ハッピーバースデートゥーユー。お誕生日おめでとうございます。」」」
夜先生はドアに手をかけたまま止まってしまっている。
「…ありがとう。っえ、プレゼントまで。ほんとにありがとう。」
夜先生はとても喜んでくれた。
「え、もしかしてこのネックレス手作り?」
「「そうです。」」
先生は私たちが作ったネックレスを早速つけてくれた。やっぱりとても似合っている。
「実はそれ、ただのネックレスじゃないんです。」
私と彩空は鞄から自分たちのキーホルダーを取り出す。
「ネックレスだけでも可愛いんですけど、私たちのキーホルダー2つと先生のネックレス、この3つをくっつけることで絵柄が完成するんです。ペアキーホルダー・ネックレス。みたいな。」
先生は驚いた顔をする。
「女子3人、お揃いだね。」
ここで、さらに先生を驚かせるケーキとクッキーの登場だ。
「え、ケーキとクッキーもあるの?しかも手作り?やばい泣きそうだよ。え、太陽系じゃん。ケーキは、大地?美味しそう。」
ケーキは切ってからのお楽しみだ。
「あ、包丁ないから切れないじゃん。ケーキ大きく作っちゃったし、職員室の先生でも誘って家庭科室で食べるか。」
きっと、お家でも家族とケーキを食べるだろう。たくさん食べてもらいたいが、お腹いっぱいになられても困る。複雑だ。
職員室にたまたまいた赤石先生とラッキーな3人の先生を誘って、家庭科室でケーキを食べる。
「じゃ、切るね。」
「あ、待って。写真撮りたい。」
私たちが作ったお世辞にも綺麗とはいえないケーキの写真を撮ってくださるんですか。先生は神ですか?でも、驚くのはこれからですよ。
「えー、中が地層になってる。ちゃんと色が違うし、マグマだまりもある。これは凝灰岩の層?下の層だけチョコチップあるし。もしかして、化石?完成度高すぎでしょ。」
あはは。そう、自分で言うのもなんだけど完成度が高いんです。先生は、断面の写真も撮っていた。嬉しい。頑張った甲斐があった。そして、先生はケーキを食べる。
「んーん。ウンメ。」
久しぶりに鹿児島の方言を聞いた。先生が方言で美味しいと言う時は、心から本当に美味しいと思っている時だ。たがら、お世辞ではない。それが、私たちをもっと幸せにする。その姿を見て、私たち3人も食べ始める。うん。かなり美味しい。スポンジも失敗しておらず、甘すぎない。美味しすぎて、8人ともすぐに食べ終わってしまった。
「あはは。彗、口の周りに生クリーム付いてるよ。」
夜先生に指摘されて、彗は顔が真っ赤だ。それを見て私たちはさらに笑う。楽しいな。この時間が永遠と続けばいいのに。夜先生と心から笑い合う時間。夜先生の楽しそうな顔が、私の心を満たしていく。
「そーいえば、スーパームーン見るんじゃなかったの?」
あ、やべ。忘れてた。もう17時を過ぎている。私たちは急いで家庭科室と地学室を片付けて、望遠鏡の準備をする。



