今日は待ちに待った出発の日だ。駅に集合して電車で羽田まで行き、飛行機で鹿児島に行く。私たちは3人だから、グッとパーっで先生の隣に座る人を決める。とりあえず、電車の中では彩空が夜先生と座り、私は彗と座ることになった。朝が早かったわけではないが私と彗は寝てしまった。
「詩月、爆睡してたね。うちなんか、夜先生と話し込んじゃって寝れなかったから、めっちゃ眠いよ。」
乗り換えるために電車から降りると、彩空が自慢気に話しかけてきた。いいな、羨ましい。
「いいもん。彗に譲ってもらって、飛行機では隣乗るもん。」
話し合って、乗り換えの時は席を変えないことにしている。つまり、飛行機で夜先生の隣に乗るのは私か彗だ。心優しい彗ならきっと席を譲ってくれるだろう。それまでは彗と宇宙雑学で勝負でもしてるか。
「わー。羽田空港だ。」
飛行機に乗るのが初めてな私は、羽田に来るのも初めてだった。さっき、彗と相談して飛行機では私が夜先生の隣に座ることになった。私の後ろは彩空、その隣が彗だ。
「ちゃんと酔い止めのんだ?詩月が酔わなさそうならでいいんだけど、私が窓側に座ってもいい?」
もちろん酔い止めはもう飲んだ。もう心配はかけたくないからね。だから、きっと酔わないだろう。
「別に通路側でも全然大丈夫です。先生は何で窓側がいいんですか?酔いやすいタイプですか?」
「そういうわけではないんだけど。だって飛行機って空から地球が見れるんだよ。めったに自分の目で直接見れないんだから。」
なんて素敵な理由なんだ。将来お金持ちになって、プライベートジェットでも買ってあげたい。
「当機はまもなく離陸いたします。」
ドラマやアニメなどの中で初めての離陸を怖がる子供がよくいるが、あんなの全然平気だと思っていた。けれど、怖い。怖すぎる。怖すぎて、手がだんだん震えてきた。その時、夜先生がそっと手を握ってくれた。
「怖くないから、大丈夫だよ。」
そのまま、飛行機が飛び立つまで夜先生はずっと手を握ってくれていた。そのおかげで、離陸は全然怖くなかった。逆に夜先生に私のドキドキが伝わってしまわないかの方が怖かった。
離陸してからしばらくして、私は後ろを振り返り彩空にピースする。
「えへへ。いいでしょ。先生と手繋いじゃった。」
今、私はとてもニヤニヤしているだろう。いや、推しと手を繋いでニヤニヤしない方がおかしい。彩空はこっちを睨んでいるが、それすらも今は私を優越感に浸す。
少し彩空とおしゃべりをしてから、夜先生とおしゃべりをしようと思い横を見る。
「よるせんせ…。」
ん?んんん?っえ。もう1度彩空の方を振り返る。彩空は不思議そうな顔をしていたが、そんなこと気にせずに横を見直す。華麗なる2度見だった。そこには、天使の寝顔があったから。何度確認してもやはり夜先生が眠っている。可愛い。美しい。
「彩空、やばいよ夜先生が寝てる。」
小さい声で教えてあげると、彩空も身を乗り出して見ていた。あまり人の寝顔を見るのは良くないことだと思うが、それくらい可愛い寝顔だった。
先生が寝てからちょうど1時間がたった頃だろうか。スマホをいじっていると、先生が起きた。
「今、何時?」
「えっと、16時30分です。」
「鹿児島まであと1時間か。あ、ねぇ見て。地球。四国のあたりかなぁ。」
私は失礼ながら、身を乗り出して見させていただいた。確かに空から見る地球は美しい。夜先生がハマる理由にも納得できる。その後は、1時間楽しく夜先生とおしゃべりした。先生がピンク色が好きなこと、息子が1人と娘が2人いること、意外なことにアニメが好きなこと。たくさんのことを知ることができた。アニメ好きということで、どんなアニメが好きなのか、どの声優が好きかなど大盛り上がりだった。
「当機はまもなく着陸いたします。」
そろそろ鹿児島か。やはり彗に席を譲ってもらってよかった。彗には感謝しても仕切れない。
「「「鹿児島だー。」」」
私と彩空と彗の声がかぶる。3人とも同じタイミングで同じことを言っているのがおかしくて、吹き出してしまった。
「お腹減ったー。」
お昼を簡単に済ませた私たちはもうお腹がぺこぺこだ。
「事前に言った通り1人ひと部屋のビジネスホテルだから、ご飯が出ないんだ。実は実家がこの辺で、昔よく行ってたラーメン屋があるから今日の夕飯はそこでいい?」
ラーメンか。美味しそうだ。しかも先生の行きつけのお店。気になる。
「へいらっしゃい。って、橘んとこの嬢ちゃんじゃねーか。久しぶりだな。元気してたか?って、子供そんなに小さかったっけか?」
「お久しぶり、おじさん。てか、いつも言ってるでしょ。もう嬢ちゃんはやめてって。恥ずかしいったらありゃしない。あ、3人は生徒なの。こっちで研究発表があって。」
橘…。旧姓だろうか。桜庭も似合うが、橘もよく似合う。
先生曰く、醤油ラーメンがおすすめらしいのでみんな醤油ラーメンを頼んだ。それにしても、このお店は昔からの常連さんが多いようだ。さっきからずっと、夜先生に話しかけてくるおじいさんが後をたたない。たまに、夜先生の美貌に鼻の下を伸ばしている輩もいたが。
ラーメンを待っている間、1人のおじいさんが彗に話しかけてきた。
「おい兄ちゃん、夜ちゃんが昔気象予報士だったの知ってるか?あ、ほらちょうどあのテレビのお天気コーナーみたいなので、天気予報を伝えてたんだよ。」
夜先生をテレビ越しに見ていた人と実際に会えるなんて。おじいさんが羨ましい。
「可愛かったですか?」
「あ?もちろん。ムゼ(可愛い)。けど、怒らせると怖いから気をつけるんだよ。あ、ほらこっちを睨んでやがる。おー、こっわ。」
そう言っておじいさんは立ち去っていった。やはり可愛かったのか。というか、教え子に怖いとか忠告している時点で睨まれるのは当たり前ではないか。睨み顔も、もちろん素敵だが。ちょうど、その時ラーメンが運ばれてきた。
「いただきます。」
な、なんだこれは。とてもおいしい。
「んーん、ウンメ。」
ふぁ?今のは先生だよね?美味しすぎて方言出てましたよ。いや、可愛すぎでしょ。方言は反則だよ。
ホテルに着いたのは、19時だった。早く寝た方がいいと言っても、流石に早すぎる。
「ねぇ、暇だしみんなでトランプでもやらない?」
話し合った結果、10分後に私の部屋に集合してみんなでトランプやUNOをすることになった。もちろん、夜先生も参加する。
久しぶりのトランプは盛り上がった。彗が以外にも手強い。トランプをしながら、なぜか話題は恋バナになった。
「えー、3人は好きな人いないの?じゃ、最初は詩月。」
先生は、もはやわざとなのだろうか?まぁ、推しとは別で恋心の方なのだろうが。
「夜先生。あなたのことが、わっぜぇ好き。」
”あなたのことが、すごく好きです。 ”という意味だ。
「ほなこて言うとなあ…私も好いちょっど。」
“本当のこと言うと、私も好きなんです”か。彩空よ、便乗すんな。
「え、それ鹿児島の方言だよね。なんで知ってるの?」
「さっきのラーメン屋のおじさんに教えてもらいました。」
そう、さっき教えてもらったのだ。寝る前には言おうと思っていたが、まさか恋バナするとは思ってなかったから少し焦った。
夜先生は、嬉しそうだ。よかった、頑張って。先生が話せる方言を自分も少しだが話せるのは、運命を感じる。
「あ、もう21時だね。そろそろ解散して、お風呂入って、今日は早めに寝ようか。」
もう21時か。1日が楽しすぎて過ぎるのが早かったな。感傷に浸っていると
「詩月、よくよく考えてみれば、夜先生とひとつ屋根の下じゃない。」
彩空、キモいが確かにそれはやばい。今日はドキドキして眠れないかもしれない。
「じゃぁ、おやすみ。」
トランプとUNOを片付けて、みんなが部屋から出て行く。
「今日はどうもありがとう、また明日。ほんならねえ。」
いや、去り際に方言はだめでしょ。可愛すぎるて。ドキドキが止まらない。こんなんであと2日心臓は持つのだろうか。
お風呂に入り身支度を整えると22時になっていた。早めに寝ようと言われた私は、真面目に布団に入る。ドキドキして眠れないかもしれないと思っていたが、疲れ切っていた私は案外早く眠ってしまった。
「今日は発表頑張ろうね。」
朝、夜先生が私たちを励ましてくれた。そういえば昨日が楽しすぎて忘れていたが、鹿児島に来た本来の目的は研究発表だった。
「よくがんばったね。上手に発表できてたよ。」
いろいろな発表があって勉強になった。
「んー、まだ15時半か。時間あるからどっか観光しに行く?」
「行きたいです。」
インターネットで観光地を調べ、3人で話し合った結果、やはり行くならそこしかないということになった。
「先生の愛した桜島に行きたいです。」
「ここが桜島かぁ。」
桜島。思っていたより普通だなぁ。その中でも私たちを驚かせたのは、溶岩に埋まった鳥居だった。上が少し出ているだけの鳥居。とても珍しかった。
また、有村溶岩展望所から見る景色もとても素敵だった。噴火に伴う爆発も聞こえた。
「わー、すごい。彩空、一緒に写真撮ろう。」
そういえば全然写真を撮っていなかったことに気づいた私たち。けれど、やっぱり2人だけだと寂しい。
「夜先生も一緒に撮りましょ。」
彩空が先生も誘ってくれた。
「え、いや俺は?」
「彗、空気読め。女子3人の写真を邪魔するな。」
夜先生と一緒に写真を撮ってしまった。これはもう家宝にするしかない。
「じゃあ次は、私とじゃなくて彗ととってあげて。私も学校にいる先生に写真を送らなきゃいけないし。」
彗とも写真を撮った後、私たちは火山灰アートをして帰った。とても楽しかった。家に帰ったら作った絵と共に先生との写真を部屋に飾ろう。
楽しかった旅行もそろそろ終わりか。明日は少しお土産を買って、埼玉まで帰る。まだまだ一緒にいたいなぁ。そんなことを思いながら眠りにつく。
「先生、どのお土産がオススメですか?」
お土産がいっぱいありすぎて迷ってしまう。やはりここは夜先生に聞くのが1番だろう。
「うーん、そうねぇ、かすたどんが1番おいしいと思うよ。私も家族に買って帰ろう。」
かすたどん、か。食べ方もたくさんあり、とても美味しそうだ。よし、これを買って帰ろう。
帰りの飛行機、夜先生の隣に座るのは彗だ。私は彩空とこの3日間を振り返る。夜先生の新たな一面も見れたし、写真を撮ることもできた。充実した3日間だった。
「3日間、早かったなー。」
「準備も大変だったけど、めっちゃ楽しかった。」
「車のドリンクホルダーに酔い止めが現れた時、夜先生に惚れたわ。」
「詩月、何言ってんの?元々惚れてたでしょ。惚れ直したって感じ?」
確かに、彩空の言う通りだ。ずっと前から惚れていた。先生には惚れ直させられてばかりだ。
電車で隣に座るのを決めるのは、やっぱりじゃんけんだ。
「最初はグー、じゃんけんポン。」
あぁ。負けた。隣に座るのは彩空だ。うらやましい。
「そういえば、彗、夜先生の誕生日いつか知ってる?」
「うん。10月16日。」
10月16日。あと、1ヶ月とちょっとじゃないか。
「土曜日か。ちょうどスーパームーンだし、少し早めに集合して誕生日パーティーしてから天体観測しようよ。」
「いいね。楽しそう。他の天文部員も誘ってみるけど、土曜じゃ他の部活でみんな来られないだろうな。」
乗り換えの電車を待っている間、私は彩空に誕生日パーティーのことを相談する。
「ー。ってことになったんだけど、どう?」
「めっちゃいいと思う。なんかプレゼントあげたい。」
「3人で1つになるものとかはどう?先生いつもネックレスだから先生のはネックレス、私たちのはキーホルダー。あと、ケーキ作りたい。地学だから…地層ケーキ。とか?」
自分で言っておきながら、地層ケーキとか絶対作るのむずいじゃん。
「楽しそう。キーホルダーは手作りにしよ。詩月がケーキ作るなら、うちはクッキーにしようかな。太陽系のアイシングクッキー。」
楽しみになってきた。1ヶ月、全力で準備しよう。
あ、帰ってきてしまった。駅に着いてしまった。これで楽しかった旅行も、もう終わりだ。
「ありがとうございました。楽しかったです。ではまた夏休み明け、学校で。」
「詩月、爆睡してたね。うちなんか、夜先生と話し込んじゃって寝れなかったから、めっちゃ眠いよ。」
乗り換えるために電車から降りると、彩空が自慢気に話しかけてきた。いいな、羨ましい。
「いいもん。彗に譲ってもらって、飛行機では隣乗るもん。」
話し合って、乗り換えの時は席を変えないことにしている。つまり、飛行機で夜先生の隣に乗るのは私か彗だ。心優しい彗ならきっと席を譲ってくれるだろう。それまでは彗と宇宙雑学で勝負でもしてるか。
「わー。羽田空港だ。」
飛行機に乗るのが初めてな私は、羽田に来るのも初めてだった。さっき、彗と相談して飛行機では私が夜先生の隣に座ることになった。私の後ろは彩空、その隣が彗だ。
「ちゃんと酔い止めのんだ?詩月が酔わなさそうならでいいんだけど、私が窓側に座ってもいい?」
もちろん酔い止めはもう飲んだ。もう心配はかけたくないからね。だから、きっと酔わないだろう。
「別に通路側でも全然大丈夫です。先生は何で窓側がいいんですか?酔いやすいタイプですか?」
「そういうわけではないんだけど。だって飛行機って空から地球が見れるんだよ。めったに自分の目で直接見れないんだから。」
なんて素敵な理由なんだ。将来お金持ちになって、プライベートジェットでも買ってあげたい。
「当機はまもなく離陸いたします。」
ドラマやアニメなどの中で初めての離陸を怖がる子供がよくいるが、あんなの全然平気だと思っていた。けれど、怖い。怖すぎる。怖すぎて、手がだんだん震えてきた。その時、夜先生がそっと手を握ってくれた。
「怖くないから、大丈夫だよ。」
そのまま、飛行機が飛び立つまで夜先生はずっと手を握ってくれていた。そのおかげで、離陸は全然怖くなかった。逆に夜先生に私のドキドキが伝わってしまわないかの方が怖かった。
離陸してからしばらくして、私は後ろを振り返り彩空にピースする。
「えへへ。いいでしょ。先生と手繋いじゃった。」
今、私はとてもニヤニヤしているだろう。いや、推しと手を繋いでニヤニヤしない方がおかしい。彩空はこっちを睨んでいるが、それすらも今は私を優越感に浸す。
少し彩空とおしゃべりをしてから、夜先生とおしゃべりをしようと思い横を見る。
「よるせんせ…。」
ん?んんん?っえ。もう1度彩空の方を振り返る。彩空は不思議そうな顔をしていたが、そんなこと気にせずに横を見直す。華麗なる2度見だった。そこには、天使の寝顔があったから。何度確認してもやはり夜先生が眠っている。可愛い。美しい。
「彩空、やばいよ夜先生が寝てる。」
小さい声で教えてあげると、彩空も身を乗り出して見ていた。あまり人の寝顔を見るのは良くないことだと思うが、それくらい可愛い寝顔だった。
先生が寝てからちょうど1時間がたった頃だろうか。スマホをいじっていると、先生が起きた。
「今、何時?」
「えっと、16時30分です。」
「鹿児島まであと1時間か。あ、ねぇ見て。地球。四国のあたりかなぁ。」
私は失礼ながら、身を乗り出して見させていただいた。確かに空から見る地球は美しい。夜先生がハマる理由にも納得できる。その後は、1時間楽しく夜先生とおしゃべりした。先生がピンク色が好きなこと、息子が1人と娘が2人いること、意外なことにアニメが好きなこと。たくさんのことを知ることができた。アニメ好きということで、どんなアニメが好きなのか、どの声優が好きかなど大盛り上がりだった。
「当機はまもなく着陸いたします。」
そろそろ鹿児島か。やはり彗に席を譲ってもらってよかった。彗には感謝しても仕切れない。
「「「鹿児島だー。」」」
私と彩空と彗の声がかぶる。3人とも同じタイミングで同じことを言っているのがおかしくて、吹き出してしまった。
「お腹減ったー。」
お昼を簡単に済ませた私たちはもうお腹がぺこぺこだ。
「事前に言った通り1人ひと部屋のビジネスホテルだから、ご飯が出ないんだ。実は実家がこの辺で、昔よく行ってたラーメン屋があるから今日の夕飯はそこでいい?」
ラーメンか。美味しそうだ。しかも先生の行きつけのお店。気になる。
「へいらっしゃい。って、橘んとこの嬢ちゃんじゃねーか。久しぶりだな。元気してたか?って、子供そんなに小さかったっけか?」
「お久しぶり、おじさん。てか、いつも言ってるでしょ。もう嬢ちゃんはやめてって。恥ずかしいったらありゃしない。あ、3人は生徒なの。こっちで研究発表があって。」
橘…。旧姓だろうか。桜庭も似合うが、橘もよく似合う。
先生曰く、醤油ラーメンがおすすめらしいのでみんな醤油ラーメンを頼んだ。それにしても、このお店は昔からの常連さんが多いようだ。さっきからずっと、夜先生に話しかけてくるおじいさんが後をたたない。たまに、夜先生の美貌に鼻の下を伸ばしている輩もいたが。
ラーメンを待っている間、1人のおじいさんが彗に話しかけてきた。
「おい兄ちゃん、夜ちゃんが昔気象予報士だったの知ってるか?あ、ほらちょうどあのテレビのお天気コーナーみたいなので、天気予報を伝えてたんだよ。」
夜先生をテレビ越しに見ていた人と実際に会えるなんて。おじいさんが羨ましい。
「可愛かったですか?」
「あ?もちろん。ムゼ(可愛い)。けど、怒らせると怖いから気をつけるんだよ。あ、ほらこっちを睨んでやがる。おー、こっわ。」
そう言っておじいさんは立ち去っていった。やはり可愛かったのか。というか、教え子に怖いとか忠告している時点で睨まれるのは当たり前ではないか。睨み顔も、もちろん素敵だが。ちょうど、その時ラーメンが運ばれてきた。
「いただきます。」
な、なんだこれは。とてもおいしい。
「んーん、ウンメ。」
ふぁ?今のは先生だよね?美味しすぎて方言出てましたよ。いや、可愛すぎでしょ。方言は反則だよ。
ホテルに着いたのは、19時だった。早く寝た方がいいと言っても、流石に早すぎる。
「ねぇ、暇だしみんなでトランプでもやらない?」
話し合った結果、10分後に私の部屋に集合してみんなでトランプやUNOをすることになった。もちろん、夜先生も参加する。
久しぶりのトランプは盛り上がった。彗が以外にも手強い。トランプをしながら、なぜか話題は恋バナになった。
「えー、3人は好きな人いないの?じゃ、最初は詩月。」
先生は、もはやわざとなのだろうか?まぁ、推しとは別で恋心の方なのだろうが。
「夜先生。あなたのことが、わっぜぇ好き。」
”あなたのことが、すごく好きです。 ”という意味だ。
「ほなこて言うとなあ…私も好いちょっど。」
“本当のこと言うと、私も好きなんです”か。彩空よ、便乗すんな。
「え、それ鹿児島の方言だよね。なんで知ってるの?」
「さっきのラーメン屋のおじさんに教えてもらいました。」
そう、さっき教えてもらったのだ。寝る前には言おうと思っていたが、まさか恋バナするとは思ってなかったから少し焦った。
夜先生は、嬉しそうだ。よかった、頑張って。先生が話せる方言を自分も少しだが話せるのは、運命を感じる。
「あ、もう21時だね。そろそろ解散して、お風呂入って、今日は早めに寝ようか。」
もう21時か。1日が楽しすぎて過ぎるのが早かったな。感傷に浸っていると
「詩月、よくよく考えてみれば、夜先生とひとつ屋根の下じゃない。」
彩空、キモいが確かにそれはやばい。今日はドキドキして眠れないかもしれない。
「じゃぁ、おやすみ。」
トランプとUNOを片付けて、みんなが部屋から出て行く。
「今日はどうもありがとう、また明日。ほんならねえ。」
いや、去り際に方言はだめでしょ。可愛すぎるて。ドキドキが止まらない。こんなんであと2日心臓は持つのだろうか。
お風呂に入り身支度を整えると22時になっていた。早めに寝ようと言われた私は、真面目に布団に入る。ドキドキして眠れないかもしれないと思っていたが、疲れ切っていた私は案外早く眠ってしまった。
「今日は発表頑張ろうね。」
朝、夜先生が私たちを励ましてくれた。そういえば昨日が楽しすぎて忘れていたが、鹿児島に来た本来の目的は研究発表だった。
「よくがんばったね。上手に発表できてたよ。」
いろいろな発表があって勉強になった。
「んー、まだ15時半か。時間あるからどっか観光しに行く?」
「行きたいです。」
インターネットで観光地を調べ、3人で話し合った結果、やはり行くならそこしかないということになった。
「先生の愛した桜島に行きたいです。」
「ここが桜島かぁ。」
桜島。思っていたより普通だなぁ。その中でも私たちを驚かせたのは、溶岩に埋まった鳥居だった。上が少し出ているだけの鳥居。とても珍しかった。
また、有村溶岩展望所から見る景色もとても素敵だった。噴火に伴う爆発も聞こえた。
「わー、すごい。彩空、一緒に写真撮ろう。」
そういえば全然写真を撮っていなかったことに気づいた私たち。けれど、やっぱり2人だけだと寂しい。
「夜先生も一緒に撮りましょ。」
彩空が先生も誘ってくれた。
「え、いや俺は?」
「彗、空気読め。女子3人の写真を邪魔するな。」
夜先生と一緒に写真を撮ってしまった。これはもう家宝にするしかない。
「じゃあ次は、私とじゃなくて彗ととってあげて。私も学校にいる先生に写真を送らなきゃいけないし。」
彗とも写真を撮った後、私たちは火山灰アートをして帰った。とても楽しかった。家に帰ったら作った絵と共に先生との写真を部屋に飾ろう。
楽しかった旅行もそろそろ終わりか。明日は少しお土産を買って、埼玉まで帰る。まだまだ一緒にいたいなぁ。そんなことを思いながら眠りにつく。
「先生、どのお土産がオススメですか?」
お土産がいっぱいありすぎて迷ってしまう。やはりここは夜先生に聞くのが1番だろう。
「うーん、そうねぇ、かすたどんが1番おいしいと思うよ。私も家族に買って帰ろう。」
かすたどん、か。食べ方もたくさんあり、とても美味しそうだ。よし、これを買って帰ろう。
帰りの飛行機、夜先生の隣に座るのは彗だ。私は彩空とこの3日間を振り返る。夜先生の新たな一面も見れたし、写真を撮ることもできた。充実した3日間だった。
「3日間、早かったなー。」
「準備も大変だったけど、めっちゃ楽しかった。」
「車のドリンクホルダーに酔い止めが現れた時、夜先生に惚れたわ。」
「詩月、何言ってんの?元々惚れてたでしょ。惚れ直したって感じ?」
確かに、彩空の言う通りだ。ずっと前から惚れていた。先生には惚れ直させられてばかりだ。
電車で隣に座るのを決めるのは、やっぱりじゃんけんだ。
「最初はグー、じゃんけんポン。」
あぁ。負けた。隣に座るのは彩空だ。うらやましい。
「そういえば、彗、夜先生の誕生日いつか知ってる?」
「うん。10月16日。」
10月16日。あと、1ヶ月とちょっとじゃないか。
「土曜日か。ちょうどスーパームーンだし、少し早めに集合して誕生日パーティーしてから天体観測しようよ。」
「いいね。楽しそう。他の天文部員も誘ってみるけど、土曜じゃ他の部活でみんな来られないだろうな。」
乗り換えの電車を待っている間、私は彩空に誕生日パーティーのことを相談する。
「ー。ってことになったんだけど、どう?」
「めっちゃいいと思う。なんかプレゼントあげたい。」
「3人で1つになるものとかはどう?先生いつもネックレスだから先生のはネックレス、私たちのはキーホルダー。あと、ケーキ作りたい。地学だから…地層ケーキ。とか?」
自分で言っておきながら、地層ケーキとか絶対作るのむずいじゃん。
「楽しそう。キーホルダーは手作りにしよ。詩月がケーキ作るなら、うちはクッキーにしようかな。太陽系のアイシングクッキー。」
楽しみになってきた。1ヶ月、全力で準備しよう。
あ、帰ってきてしまった。駅に着いてしまった。これで楽しかった旅行も、もう終わりだ。
「ありがとうございました。楽しかったです。ではまた夏休み明け、学校で。」



