「睡蓮……睡蓮……目を開けてくれ。睡蓮……」
「しゅん……らい……?」
次に目を開けた時、目の前には悲痛な顔で華蓮の手を握る春雷の姿があったのだった。
「私、どうなったの……?」
「親父の雷を受けて、しばらく生死を彷徨っていたんだ。俺が完全に庇いきれなかったせいで……」
身体を起こそうとすると、春雷が手を貸してくれた。手を握ったまま離そうとしない春雷に華蓮はそっと微笑む。
「春雷が悪いわけじゃない。ところでお腹の子はどうなったの?」
「腹の子は無事だ。早産になったが産まれたよ。このままだと二人とも危なかったから」
今は雪起が面倒を見ていると聞いて、そっと胸を撫で下ろす。自分のせいでお腹の子に何かあったらと思ったので安堵した。
「良かった」
「それで約束通りに君を人間界に帰そうかと思うんだが……明日にでも」
「そんなに早く帰すの?」
「親父も言っていただろう。犬神は人間を不幸にする存在だと。産まれた子供は責任をもって俺が育てる。だから君は安心してここであったことを全て忘れて人間界で暮らすんだ」
「春雷。話したいことがあるの」
華蓮が真剣な顔で真っ直ぐ春雷を見つめると、春雷は「なんだ?」と見つめ返してくれる。
「私は華蓮って言うの。……名前を教えると縁が出来るんだよね」
「なっ!?」
「春雷、私ね。付き合っていた彼氏が違う人との間に子供を作ったことで彼氏と喧嘩して家を飛び出したの。そうしたら貴方と出会ったの。最初は貴方も彼氏と同じように責任を感じていると思ってた。でも……」
春雷に握られたままの手に反対の手を重ねる。
「責任だけじゃないって、思えるようになったの。春雷が優しいからだって。私が不幸にならないように距離を置こうとしたんだよね。深く心に踏み込まないようにして……。今度は私が春雷に優しくなりたい。春雷はどうして欲しい? 私は春雷に幸せになって欲しい」
「俺は……」
「私を攫って春雷。産まれた子供と三人で幸せになろう。私も家族が欲しい。自分が安心出来る場所が……」
「睡蓮。いや、華蓮。俺も家族が欲しい。でも俺は君たちを不幸にするかもしれないぞ」
「不幸かどうかは自分たちが決めるの。誰かが決めるわけじゃないのよ」
華蓮の手を握る春雷の手に力が入る。そうして、春雷は華蓮に顔を近づけたのだった。
「ありがとう」
「こういう時に言う台詞がそれなの?」
「分かった。こうだろう。……好きだよ。これから幸せになろう」
「ええ」
そうして二人の唇が重なる。
柔らかく、そしていつまでも熱い口付けであった。
「しゅん……らい……?」
次に目を開けた時、目の前には悲痛な顔で華蓮の手を握る春雷の姿があったのだった。
「私、どうなったの……?」
「親父の雷を受けて、しばらく生死を彷徨っていたんだ。俺が完全に庇いきれなかったせいで……」
身体を起こそうとすると、春雷が手を貸してくれた。手を握ったまま離そうとしない春雷に華蓮はそっと微笑む。
「春雷が悪いわけじゃない。ところでお腹の子はどうなったの?」
「腹の子は無事だ。早産になったが産まれたよ。このままだと二人とも危なかったから」
今は雪起が面倒を見ていると聞いて、そっと胸を撫で下ろす。自分のせいでお腹の子に何かあったらと思ったので安堵した。
「良かった」
「それで約束通りに君を人間界に帰そうかと思うんだが……明日にでも」
「そんなに早く帰すの?」
「親父も言っていただろう。犬神は人間を不幸にする存在だと。産まれた子供は責任をもって俺が育てる。だから君は安心してここであったことを全て忘れて人間界で暮らすんだ」
「春雷。話したいことがあるの」
華蓮が真剣な顔で真っ直ぐ春雷を見つめると、春雷は「なんだ?」と見つめ返してくれる。
「私は華蓮って言うの。……名前を教えると縁が出来るんだよね」
「なっ!?」
「春雷、私ね。付き合っていた彼氏が違う人との間に子供を作ったことで彼氏と喧嘩して家を飛び出したの。そうしたら貴方と出会ったの。最初は貴方も彼氏と同じように責任を感じていると思ってた。でも……」
春雷に握られたままの手に反対の手を重ねる。
「責任だけじゃないって、思えるようになったの。春雷が優しいからだって。私が不幸にならないように距離を置こうとしたんだよね。深く心に踏み込まないようにして……。今度は私が春雷に優しくなりたい。春雷はどうして欲しい? 私は春雷に幸せになって欲しい」
「俺は……」
「私を攫って春雷。産まれた子供と三人で幸せになろう。私も家族が欲しい。自分が安心出来る場所が……」
「睡蓮。いや、華蓮。俺も家族が欲しい。でも俺は君たちを不幸にするかもしれないぞ」
「不幸かどうかは自分たちが決めるの。誰かが決めるわけじゃないのよ」
華蓮の手を握る春雷の手に力が入る。そうして、春雷は華蓮に顔を近づけたのだった。
「ありがとう」
「こういう時に言う台詞がそれなの?」
「分かった。こうだろう。……好きだよ。これから幸せになろう」
「ええ」
そうして二人の唇が重なる。
柔らかく、そしていつまでも熱い口付けであった。