『夜々さんを嫁ぎ先に連れて行けるわけないでしょ』

「……ごもっともです」

諌(いさ)められた。

『じゃあリハビリで一緒に作ろ! 作りやすいの考えとくから!』

「……お願い致します」

『代わりに遙音くんのすきなお弁当の作り方教えてね』

「かしこまりました」

口調が主従関係になっていた。……いいんだけどさ。

『爆発させたときの味見の実験台は頼にやってもらうとして――』

「………」

そして笑満の中での頼の扱いが非道い。

『とりあえず、あたしが言う通りにやってたら爆発しないから、安心しなさい』

「……はい」

『咲桜んとこ、まだ流夜くんいるの?』

「うん。父さんと話してる」

『じゃあ――咲桜がよかったら、流夜くんにも言っておいても大丈夫だから。遙音くんの方で心配かけたみたいだし』

「了解です。じゃあまた明日ね」

『うんっ。咲桜パパ怒らせないようにすんだよー』

「笑満こそ。……おめでとう」

『……ありがとう』

通話を終えて、また嬉しくなってくる。笑満と遙音先輩が付き合う――。

ぎゅーっと顔が熱っぽくなった。

「ぎゃーっ! 素敵すぎる!」

何度も繰り返した言葉だけど、勢いそのままに部屋を飛び出した。

ちょうど階段下に流夜くんがいたので、飛びついて報告する。

流夜くんは驚いていたけど、嬉しそうに微笑んだ。

――公園で初めて逢って、その手を引いた親友。

……どうか、永(なが)の幸せを。