終始――生きること自体を面白がってのらりくらりな吹雪はさておき、俺と降渡の間で意見が割れることはよくある。

大体がこんなしょーもない理由だが。

……降渡がマジメな顔するのも、対俺のときくらいか。

睨んでくる降渡。いつもなら睨み返して言い合いになるところだが、今日は遙音にとってめでたい日だ。

……嫌だけど譲歩するか。

「……わかった、降参。遙音、お前の分のメシ、咲桜が作ってくれたのあるから食ったら帰って寝ろ。進路決まるまで夜歩き禁止」

「えっ、咲桜のメシ食っていいの?」

遙音の意識がまともになった。

「反応はそっち? 夜歩き禁止はいいわけ?」

遙音派についた降渡は苦笑して言う。……確かにな。

「勝手に出歩くし。サツ署じゃなくて主に雲居んとことか」

「メシやんねーぞ」

「マジメに家で勉強します」

正座して頭下げて来た。……そこまで咲桜の弁当気に入ってんのか。

喜ばしいことだが、日義のとき同様なんかモヤモヤする。

「んで、お前は何? また龍さんとこか?」

「んーや。今日はりゅうの知恵貸してもらいに来た」

にっかり笑う不良探偵。……面倒持ってきやがったな。

「じんぐー腹減ったー。メシちょうだいー」

遙音が言い出したので、手伝わせて咲桜がくれたものも広げる。

……ごめん、咲桜。予定より客が増えた。

降渡は「おー」と嬉々として参加してきた。

あまり食事の行儀のよくない面子なので、ファイルやパソコンを広げて食事片手間に降渡の持ち込んだものも対応していく。

さすがに食事中を勘案してか、事件そのものではなく俺の得意分野のメンタル系の問題が出されてきた。

俺と降渡はあーだこーだ言いながらペンで書き込み、ページを繰っていく。

遙音は、自分は専門家ではないこと、そしてこれはれっきとした探偵への依頼であることを理解しているのから、口を挟んではこない。

美味そうに食べている。

ときどき何か言いたげに箸を止めるが――どちらかが振らない限り自分からは言いださない。

遙音は、このままこちら側――に、居続ける気でいるのだろか。