「………」
あえてそれには答えないでおいた。咲桜の方がもっと非道い評価をしそうだったな……。ああ、確かに似ているよ……いろいろ。
「……惚れたんだ。それだけ」
本当に、ただそれだけなんだ。
今までにない感情を、咲桜は俺に持たせた。
「お前は?」
当たりまえのように問い返すと、遙音は面喰った顔をした。
「え……と?」
「松生のこと、忘れてたわけじゃないんだろ?」
「当り前だろ! 一秒たりとも!」
「うっせえ」
また叫んだので、今度はノートで叩いた。遙音は、悪い、と謝って座りなおす。
「笑満ちゃんは――たぶんずっと、すきだった。今になって気づいただけで」
「……よかったじゃねえか」
「うん――」
よかったな。
再びの邂逅。出逢えても、繋がるかわからなかった過去の因縁。それも越えて、今、松生は遙音の『彼女』だ。
「……うん」
幸せいっぱいのご様子で何より。心の中でため息をついた。
つーか何で咲桜を目の敵にしてここに悩みにくるか。色々間違い過ぎだろ。
「解決したんなら帰れ。こっちは忙しい」
「春芽んとこ行くんだろ? 俺も行きてー」
「……松生はいいのか?」
恋人成立の日に、もっと感慨深くならなくていいのか?
「……はっ!」
「どういう目覚めだ。咲桜の友人なんだから、下手なことあったら俺からも制裁がいくからな」
「うー。だけどなー、笑満ちゃんは家族にはまだ知られたくないみたいだし……」
「なら、尚更頑張れよ」
「……ん」
軽く肯いたところで、遙音はまた牙を剥いた。



