「でも付き合わねーだろ。咲桜はそういうんじゃないし」
「そうだけどー。咲桜は咲桜で何故か神宮に惚れこんでるし」
「どういう意味だ」
「しかもトドメにこの前さ……」
無視された。遙音も自分のペースに持って行くのがうまくなったな。こういうときに親心が出る三人のうちの一人だったりする。
「頼に、咲桜と俺が似てるって言われた」
「……だからなんだ?」
似てる、か? 俺にはむしろ、咲桜は吹雪に似ている気がして危険視している。
「だから! もし笑満ちゃんが、俺と咲桜が似てるからすきだとか言われたらもう立ち直れなくなんじゃん! 俺が咲桜の二番煎じっつーか咲桜が同性で俺が異性だから付き合ったって構図になっちまうじゃねーか!」
「五月蠅い」
べしっと頭を叩いた。
さすがに大声を出し過ぎだし、内容が何言ってんだというものだ。嬉しすぎて頭沸いてんじゃねえのか。
「それ言ったら逆だろ」
「……なにが逆なんだよ」
「松生が元々知っていたのはお前で、その後に咲桜と知り合ったんだろ。だったら、咲桜を王子様とか言うことのルーツも、元は似てるお前になんじゃねえのか?」
「―――」
松生が咲桜を何と呼んで好くのもいいんだけど、もし邪魔でもされるほどだったら面倒だ。
ただでさえ現状面倒なのに、これ以上増やさないでほしい。すぐに解決するつもりだけど。
「………」
遙音を叩いた手を見遣る。
……課題が一つ増えた。咲桜が『王子様』になってしまわないように、常に自分の方を向かせておかないと。
咲桜相手だと、そういうことも楽しいのだけど。
「――あ、そっか。それもありか」
目からうろこ。みたいに、遙音がぽんと手を叩いた。
おい。まさかお前がそこまで考えていなかったのか?



