「なんだよ。言いにくいのか? 降渡でも呼ぶか?」
あいつは話術巧みで聞き上手だ。俺よかよっぽど相談相手にもなれるだろう。
「……咲桜の所為だ」
「………あ?」
なんで、ここで咲桜の名前が出てくる。
――未だに遙音が呼び捨てにするのが気に喰わない俺は睨む感じになった。
何故か遙音も睨み返すような目になる。
「言ったんだよ、笑満ちゃんが。――咲桜は自分の王子様だって」
「…………」
…………。
「もう、こう瞳をキラッキラさせて、夢物語の王子様語るみたいな感じで言われたんだよ!」
「……そんで焦って告(い)ったのか?」
「焦ったっつーか追い込まれたっつーか、咲桜に対抗意識出た」
「………」
片手で額を押さえる。なんであそこは友情が重症なんだ……。
「だが――松生が好いているのはお前だろう?」
「そうだけど! ――ありがたいことにそうなんだけど! 笑満ちゃんと離れてる間に王子様とか慕う奴がいたんだぞ⁉ 取り乱していいだろ⁉ しかも相手が女子で親友だろ⁉ 間違いあったらどうする!」
「だから近所迷惑だつってんだろ」
大声を出すな。叱ると、遙音は一気にしゅんとした。
……松生の言葉がかなり効いているようだ。……慰めてやるか?
「……咲桜にはそんな感じないだろ? なんと言うか――松生とか女子を相手にするというか、王子様? を演じるノリとか」
「咲桜にそれがあったら笑満ちゃんと付き合っちゃってんじゃん!」
マジか。そこまで松生は咲桜に惚れているのか。
「まー咲桜のこと王子様って言うの、笑満ちゃんと頼ぐらいなんだけど。同級生からは頼れるおねーさんみたいな感じらしいから」



