「今電話してて、笑満から報告あったの! 詳しいことは明日吐かせる!」
……桃子さんに似ていると思ったけど、やっぱり在義さん似だな、この子は。
「電話、もう切れてるのか?」
「あ、うん。流夜くんも話したかった? 女の子の趣味合うもんね!」
「……それはもういい」
だから、彼女と女子の趣味が合うのは色々違うだろうが。
そもそも俺の趣味ってそのまま咲桜なのだから、咲桜が桃子さんや松生を好くのとは全然違う。
……けど、咲桜が嬉しそうなのであまり強くは出られなかった。
「そうだな――よかったな」
「うん!」
「咲桜、今日言ったことはちゃんと憶えてろよ?」
「うん」
「お前が惑わされるのは俺だけでいい」
「う……うん?」
「だから、心配するな」
「………うん」
「今日は帰るけど、また来るから」
「…………うん」
「あまり在義さんにも心配かけるなよ?」
「うん」
「よし、いい子。じゃあ、また」
「……また」
そろそろ在義さんの眼差しがきつくなってきた。潮時か。
玄関で、在義さんの瞳を盗んでキスをする。泡喰った咲桜は案の定真赤になる。額をくっつけておやすみを言うと、小さく咲桜も返して来た。……また明日。
――咲桜も、これで少しは安心してくれるといい。
たぶん、今自分から話せること、知っていることは総て話した。
あ、自分の趣味は咲桜だって言い聞かせるの忘れた。
次逢ったら百回くらい言わないと。咲桜はなかなか思い込みに軌道修正をかけられない性質のようだから。
……絶対桃子さんと松生が趣味だと誤解されている。そして喜ばれている。
……複雑だ。



