朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】


「君が窮地に陥ったとき、どういう行動をするかも知っておきたいしね」

「………」

このくそSどもめ。

「邪魔はするつもりないけど、父親として君の査定はするつもりだよ」

「……ご随意に」

「はは。別にいじめたいわけじゃないよ。――そろそろ降りてくるかな」

「少し様子見て来ます」

「ああ。――ああそれから」

「はい?」

「私は君を息子扱いすることを決めたのは本当だよ。――大分前から」

ね。微笑で言われて面喰った。

「私は手加減なしだからね」

思わず大きく瞬いてしまった。

在義さんが余裕を失っている。……俺に嫌がらせをして鬱憤をはらしているように見える。

そんなに千歳に関わるのが嫌なのか……。

治外法権とか、一体どんな家なんだ。在義さんにここまで余裕を失わせるなんて。

……調べておくか。旧家に強い知り合いもいることだし、使えるものは総て使う。

「ありがとうございます」

「可愛くないねえ」

「お蔭さまです」
 
――と、そこへ咲桜が勢いよく階段を駆け下りて来た。そのまま飛びついてくる。少しだけ在義さんの眉が揺れたのが俺にもわかった。

「咲桜? どうし――
「え、笑満が! 笑満が遙音先輩と付き合うって! おめでとう!」

「あ、そうなのか……」

祝う相手が間違っている。いやそんなことより。

「遙音が――そう言ったのか?」