「………」
冷や汗かいた。在義さんがそんな呪いを吐くなんて……。
「……そういうわけで、私に子がいる――血の繋がりがないとは言え――下手したら華取の再興も諦めた傍系が出しゃばってきかねない。だから……あくまで君の婚約者として、咲桜に天龍を見せてやってほしいんだ。あそこは変わってはいるけれど、だからこそ色んな世界が垣間見えるからね」
――……本当は、在義さんがそこへ連れて行きたいのだろうに。
「……その頃にはもう妻かもしれませんね」
「……君も言うようになったねえ。また邪魔されたいのかい?」
「俺は在義さんを一番継いでるって評価されることが多いですけどね。――邪魔されても、今更どこへも引き下がりませんよ」
真っ直ぐに言葉すると、在義さんはくっと笑った。
「頼もしい婿殿だ。そうだな、現地に行くわけではないけど、しばらくは千歳にかかりっきりになるから、邪魔する余裕もないだろうね。子離れのいい機会だと思うかな。――咲桜が卒業するまで、の約束は守ってくれるか?」
「――はい」
「君は信頼されることと引き換えにこの家での自由を失う。――それでも?」
「咲桜を可愛がるのは俺の本能ですから。自由なんかに制約されません」
「……君は結構減らず口だよねえ」
「在義さんに似ているそうです」
「そういえば――一緒に住むって話はどうするんだ?」
「………」
憶えていたか。いや在義さんが自分の発言を忘れるわけのがないんだが。
「君がまあ夕飯程度にこっちに来るのでも、咲桜が昏い時間に出歩くことがなければいいんだけど、私としては早く安心したいのもあるよ?」
「安心、ですか?」
意外な言葉だ。在義さんは困ったように顔を歪める。



