「ああ。君の育った土地を――龍生や愛子のいた場所を見せてやりたいとは思うんだけど、咲桜が私の系譜だとばれると厄介だからね。もし気が向いたら頼むよ」
系譜とばれると厄介?
「――構いませんが――在義さん、少し訊いても?」
「なんだい?」
少し前かがみになって、手を組んだ。
「分家の者が後継者のいない本家の跡取りにと養子に入る話はよく聞きますけど、本家から分家に養子に出るって……何かあったんですか?」
「うーん、まあなんかあるんだよねえ。……まだ、咲桜はいないね。あの子にこれ以上余計な心配はさせたくないから、これは言わないでほしいんだけど、いいかな?」
「はい」
「華取の家はね、俗に言う拝み屋とか呪い屋の家系だったんだよ」
「拝み屋? と言うと――」
「古めかしく言えば陰陽師とかそういう、ね。昔は陰陽道に沿っていたらしいんだけど、正統陰陽道からは外れてしまったらしい。私は生まれに問題があったようで、災いを避けるため――かな。それで、直系の末子ではあったけど、即分家に出されたんだ」
直系の子供で、養子に出されてすぐに本家は火事。一族はほぼ火にのまれた――。
「……在義さんの人生が波乱万丈過ぎます」
「はは。大丈夫。私も時々そう思ってるから。――これは本当に龍生しか知らないから、君のうちに秘めておけるね?」
「……はい」
「ありがとう」
「在義さん――本当に何かありましたか?」



