「……在義父さんが家に呼び戻されるとかは、なかったの?」
「当時はあったようだね。私も赤ん坊だったから詳しくはわからないけど、ここの両親が追い払ってくれたそうだよ。あとは分家も散り散りになって、華取の家は壊滅したようなものだ」
「「………」」
知らなかった。
まさか在義さんも、そこまで複雑な生まれをしていたとは。
咲桜に伝えた言葉が甦る。
『残酷なんて世界中にあふれてる――』
……本当に。
世界って、そんなだ。
それでも在義さんは今、微笑みすらたたえて娘を見ている。
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夕飯を終えて、咲桜と俺で食器の片づけをした。
咲桜とそのまま話の続きをしたかったのだけど、在義さんが伺うようにみてくるのに気づいた。
それは咲桜も同じだったようだ。
「流夜くんありがとう。あの、今日笑満に色々心配かけたからちょっと報告に電話してきたいんだけど、いいかな?」
肯いて送ると、在義さんに呼ばれた。リビングのソファに腰かける。
「流夜くんは天龍には帰っているのか?」
「え? ああ――じいさんの墓参りとかに、ほんとにたまにですけど」
「そうか。――今度行くときは咲桜も連れて行ってもらえないかな」
「咲桜を天龍に、ですか?」
そりゃ、育った家のある郷には一度くらいは連れて行きたいとは思うけど、何故在義さんがそれを頼むのか。



