「あ、やっぱり来てたんだね。すまない、ノックすればよかったね。下にいるから二人ともお腹すいたら来なさい」
在義さんは安心させるような微笑みを残して扉を閉めた。
もう顔も至近距離だった咲桜とともに、在義さんの次にお互いを見て何度も瞬いた。
「「………――――!」」
ガタガタ! バタンッ! ドダダッ!
騒々しく部屋から駆け出て、階段を下りる途中の背中を見つけた。
「在義父さん!」
「在義さん!」
声が重なる。
「「なんか悪いものでも食べた⁉」んですか⁉」
「は?」
すごい勢いでやってきた俺たちを振り返って、在義さんは間の抜けた顔をした。
「在義さんが邪魔しないって何事ですか!」
「いつもだったら引き裂いて流夜くんいじめるじゃん! 何かあったの⁉ まさか誰かが狙撃された⁉」
混乱の境地だった。在義さんはまだぽかーんとしている。あの在義がいちゃついているところを邪魔しないなんて何事だ!
――ただ、とにかく困惑していた。
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「――あのねえ、私も大概付き合いを認めないわけじゃない。――し、流夜くんは私を裏切ることはしないとわかっているからね」
在義さんの変わりように、咲桜に至っては若干泣きかけていた。在義さんは続ける。
「まあ、邪魔してほしいんならするけど。いいの? 流夜くん」
「邪魔はしてほしくないけど急に許されても気味悪いよ!」
「親に向かって気味悪いはないだろ。わかった。私が流夜くんの隣に座ろうか」
「ごめんなさい!」
咲桜が即謝ったので、ダイニングテーブルで咲桜は俺の隣についてくれた。
向かいの在義さんは、軽くため息をついた。
「流夜くんが赤面台詞簡単に吐くから、邪魔してもあまり手ごたえがなくてつまらないのもある」
……在義さんに邪魔されて、それなりに被害は被っているんだけど。そして俺、赤面台詞とか言ってるか?



