朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】


「あ、やっぱり来てたんだね。すまない、ノックすればよかったね。下にいるから二人ともお腹すいたら来なさい」

在義さんは安心させるような微笑みを残して扉を閉めた。

もう顔も至近距離だった咲桜とともに、在義さんの次にお互いを見て何度も瞬いた。

「「………――――!」」

ガタガタ! バタンッ! ドダダッ!

騒々しく部屋から駆け出て、階段を下りる途中の背中を見つけた。

「在義父さん!」

「在義さん!」

声が重なる。

「「なんか悪いものでも食べた⁉」んですか⁉」

「は?」

すごい勢いでやってきた俺たちを振り返って、在義さんは間の抜けた顔をした。

「在義さんが邪魔しないって何事ですか!」

「いつもだったら引き裂いて流夜くんいじめるじゃん! 何かあったの⁉ まさか誰かが狙撃された⁉」

混乱の境地だった。在義さんはまだぽかーんとしている。あの在義がいちゃついているところを邪魔しないなんて何事だ!

――ただ、とにかく困惑していた。





「――あのねえ、私も大概付き合いを認めないわけじゃない。――し、流夜くんは私を裏切ることはしないとわかっているからね」

在義さんの変わりように、咲桜に至っては若干泣きかけていた。在義さんは続ける。

「まあ、邪魔してほしいんならするけど。いいの? 流夜くん」

「邪魔はしてほしくないけど急に許されても気味悪いよ!」

「親に向かって気味悪いはないだろ。わかった。私が流夜くんの隣に座ろうか」

「ごめんなさい!」

咲桜が即謝ったので、ダイニングテーブルで咲桜は俺の隣についてくれた。

向かいの在義さんは、軽くため息をついた。

「流夜くんが赤面台詞簡単に吐くから、邪魔してもあまり手ごたえがなくてつまらないのもある」

……在義さんに邪魔されて、それなりに被害は被っているんだけど。そして俺、赤面台詞とか言ってるか?