流夜くんの過去に気を重くしてしまった様子の笑満に、降渡さんが声をかけた。
先輩は恨めしそうに降渡さんを睨んでいる。
「そうですねえ……あまり目立たない感じですかね。眼鏡で素顔隠しちゃってるし。言葉遣いも優しい感じで、咲桜の彼氏の顔とは大分違います」
「へー」
「ってお前知ってんだろ。不良探偵」
また先輩に悪態をつかれた降渡さんは、ははっと軽く笑ってかわす。
「降渡さんて探偵なんですか?」
「笑満ちゃんそいつに興味持っちゃダメ!」
笑満が少し訊いただけで、間に先輩が入って来た。
「遙音くん?」
「遙音、普通会話くらいゆるしてよ」
「……こいつは有能だけど素行不良探偵だから笑満ちゃんが近づいたら汚されるから近寄っちゃ駄目だ」
先輩、一息に言い切った。言い方非道いな……。
「別に俺素行不良じゃねーよ? 絆一筋だし」
「高校一年間授業に出ねえで留年した奴のどこが真面目だよ」
「そんなことしてたんですかっ?」
私が驚くと、吹雪さんがふっと笑った。
「そのくせ、試験・模試ではずっと一位だったから教師も追い出せなかったんだよねえ」
「どんな生徒ですか」
「降渡、本当は僕らより学年一つ上なんだよ」
「え、同い年じゃないんですか?」
初耳だ。
「僕と流夜は同級だけど、降渡は一つ年上」
「ふゆもりゅうもいなくてつまんなかったから、一年落とせば一緒になるかなーって」
「「超問題児じゃないですか!」」
へらへら笑う降渡さんに、私と笑満、同時に叫んだ。
成績抜群の問題児って。頼よりも問題児かもしれない。
先輩が遠い目をした。