「そりゃもう! 在義父さんの評判は流夜くんも知っての通りだけど、桃子母さんの可愛さたるやないからね! 色々覚束ない感じだったんだけど、だからいろんなことに一生懸命で、すっごい――がんばってたの」
がんばって、か……。突然やってきた華取在義の妻と認められるためにも。在義さんと咲桜のためにがんばっていたんだろう。
「……咲桜は桃子さんにも似てるんだな」
「そう、かな? そう言ってもらえると嬉しいけど。あっ、写真あるよ! 取ってくる」
するりと腕を離れて、机の上の写真立てを持って来た。
「それ、松生じゃないのか?」
写真立てに収まっているのは、中学生の咲桜と松生だ。
「卒業式で頼が撮ってくれたの。あいつ、撮られる方は苦手だからっていって、結局自分のは集合写真しかないんだ」
「らしすぎるな」
でもそれでいいんだってさ。そう言いながら、かぱりと裏蓋を開いた。
「どういう風に扱っていいのか――私がどう扱うべきか、ちょっとわからなくて。でも遠くへは置けなかったから、ここにあるの」
二枚重ねの写真。咲桜と松生の下に、家族三人の写真。隣り合うように座って、それを見せてくれた。
「これがね、春にここの庭で撮ったやつ。私が三歳のときだって。在義父さんはあんま変わってないね。桃子母さんは――」
「かわいい……」
ぽつり、思わずつぶやいた。咲桜は、え、と顔をあげた。
「だよね! 可愛いよね、桃子母さん! やっぱ流夜くん趣味合うー!」
何故か咲桜が歓喜している。
「え、何が?」
俺から返ったのは間の抜けた返事だった。なんだって?
咲桜がでれでれに喜んでいる意味がわからない。



