「え――うん?」

「お前が朝間先生を慕っているのを、俺は別に嫌だと思ったことはない」

「―――」

「正直、咲桜の母代りだという朝間先生に認めてもらえないのは悔しいが、咲桜は母にはこう懐くのかっていうのが見える朝間先生は、俺にも貴重な存在だ。……だから、俺と朝間先生がいがみあっていても、お前が心を痛めることはない。……無理な話かもしれないが」

お互い、咲桜が大事過ぎる故のいがみあいだし。

……和解とか出来そうにないけど。

「――うん」

「……ごめんな。俺がもっと上手く立ち回れたらいいんだけど……」

「そんなことないよ。夜々さんは私だけじゃなくて母さんのことも大すきだから」

「桃子さんも?」

朝間先生が在義さんを慕っているのは、見ていればすぐにわかる。

幼馴染だと聞いているけど、あとから現れた桃子さんに対して嫌な感情はないのだろうか。

咲桜はそれまでの沈んでいた様子と打って変わって、嬉しそうに瞳を輝かせ出した。

「そうなの! たぶん桃子母さんのが年上なんだけど、桃子母さん記憶障害のせいとかで色々と幼い感じでね、夜々さんのがお姉さんみたいだったの。夜々さん高校生だったんだけど、よく母さんに料理とかお裁縫とか教えてくれてて。だから私には生まれた時からお母さんは二人いるんだ」

桃子さんと朝間先生か……。少しばかり朝間先生の評価が変わってしまいそうな、いい話だな。

「へー。朝間先生、面倒見はよさそうだよな」

「うんっ。そのうち私も夜々さんに憧れちゃってね、桃子母さんみたいな可愛い子と友達になりたいなーって思うようになってね」

「待て。今の発言は色々おかしい」

「え? どこが?」

ほとんどだよ。……とは、口にはしなかった。