……素直に訊かれて、後ろめたいものを感じてしまった……。

「俺は入らないよ。俺が降渡と絆に割って入ったってのは、宮寺の誤解。何度も説明したんだけど、納得してくれなくてな。そういう経緯で、俺が宮寺に敵視されてるわけだ」

「邪魔したって……なんで宮寺先生はそんな誤解を?」

「……それは俺に非があるんだけど……」

あー、言いたくねえ。なにを好き好んで自分の女――しかも初めて好きになった子にこんな話を。

……咲桜がじーっと見て来る。……話さないわけにはいかない、か……。

「……順を追って言うとだな?」

「うん」

「最初、俺と吹雪が高等部に入った。降渡が留年していて、同じ学年になった。俺らの進学で、降渡がわざと留年したと絆が気付いてしまった」

「ふむ」

「それで、降渡の周りにあいつの事情を知らない級友が多いのは中等部時代から知っていたから――中等部は制服、学ランだったんだけど、高等部はブレザーだったんだ」

「ふむ?」

「それが少し降渡には問題で……あいつ、ネクタイがしめられないんだ」

「ネクタイ?」

「理由は……まだ、言いにくいんだが」

少しだけ、咲桜と似ている理由だから、口にしたくはない。

咲桜が首に負った傷。触れることへの拒絶が薄れているとはいえ……。

「首に何かを巻くとか、出来ないってこと?」

「……そうだ」

「うん。わかった。そういう症例があるのは、知ってるから。それで?」

咲桜は凛とした眼差しで返事をしてきた。

……咲桜は日ごとに強くなっているように感じる。