「最初の頃は模試とかの成績で反目されてた。そのうち、絆――諏訪山絆(すわやま きずな)ってのがいんだけど」

「きずな、がお名前? 男の人?」

珍しい名前だからか、咲桜は問うてきた。

「いや、女。降渡の」

「降渡さんの」

「そ。学年は一個上で、降渡と同い年。高等部で風紀委員やっててな。……降渡が授業に出ねーのをどうにかしようと騒いでたらしい。結局意味なかったけど」

「ああ……」

授業に一切出ずに試験は一位を取りつづけて留年した件は、咲桜も承知のようだ。納得したように吐息をもらした。

「降渡が一年落とした原因が俺と吹雪だって知られて――留年してからは降渡、授業出てたからな――俺と吹雪も絆からも攻撃されたな……」

「敵、多過ぎでしょう」

「普通にしているつもりだったんだけどなー」

俺たちの場合、前提条件が色々ややこしいのは見逃してほしいところだ。

「個別に敵対されてるだけなら面倒ではなかったんだけど、絆と降渡が一応付き合うようになって、俺が二人の付き合いの邪魔をしたって宮寺が誤解しちまってな……」

「ちょっと一時停止していい?」

「あ? おう」

咲桜が片手をあげてストップをかけてきた。

「降渡さんと――その絆さんは、恋人なの?」

「一応な。周りはそう認識してる」

「当人は認識してないの?」

「んー、降渡がかなり絆に惚れてて結構口説いてるんだけど、学生時代が不真面目だったからか、絆の方がからかわれてるとか受け取るときがあってな」

未だに。

「………」

咲桜の瞳が平坦になった。

「で、宮寺は絆に惚れてる」

「三角関係⁉」

「そ。ただ、高校時代から降渡と絆はお互いがすきだから、宮寺は邪魔者って位置になるけど」

「そこに、流夜くんも入るの?」